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みんなと一緒に呑んだほうが楽しい
学校要らない
鼻ん中、真っ黒
電灯じゃなきゃだめ
桐と桑
女房に作ったやつ
有名な人んとこ行ってる
三杯以上はイヤ!
女房もぜったい部屋に入れない
昔の本を見て
うちはぜんぶ特注品
昔は喧嘩だったね
職人のつける値段
直しは儲かんないね
昔は前金だった
遅れりゃ夜やりゃいい

English interview


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みんなと一緒に呑んだほうが楽しい
出稼ぎに行ってる、二人とも。ひとりはね孫がこないだできたばっかりで、ひとりは医療器具のほうへ行ってんの。お医者さんまわってんのよ。悪いね、きたないのにね。それでもさっき拭いた。(指物はみなさん仲いい?)いいですよ。四、五日まえもみんなで呑んで。(どの辺で?)上野と浅草ですね。ま、中には居るでしょう? 気風合う、合わないが。わたしはみんな合わしちゃうんだけど、居るじゃないですか色んな人が。わたしは読めないからね、みんなと一緒に呑んだほうが楽しいからね。(でも楽しい人が多いのはなぜ?)なんて言うのかな、もう勝手にさ、自分の言いたいことばっかり言ってる。それで当たり障りないじゃない、言った時だけだから。裏でごちょごちょ言うわけじゃないし、気に入らないときはその場で言っちゃうしさ。(指物は人が多い?)多いらしいですね。わたしはね、おやじがそういう組合とかっていうの大嫌いなんですよ。独りで一匹狼みたいにやってきたからね。ところがわれわれの時代になると、そうもいかないんでね。いろいろの付き合いがある。昔はほら、やれ、あそこへ行ったらあいつの仕事を盗んだとか、盗まないとか、そういうあれがあったみたいですよ。奴は真似したとか、真似しないとか、今でもやってますよ。われわれ振興会だから、いろいろな職業のかたが居ていいですよ。暑くない? いちおう扇風機かけといた。(ありがとうございます)

学校要らない
わたしは高校中退して、中学出みたいなもんだから。どっちみちこういう仕事やるんだから学校要らないと思って。だいたい中西系統っていうの、みんな指物系統なの。(この写真はお父さん?)おやじ。八十で亡くなったのね。(ずっと仕事をしてて?)そう、もう小僧から。昔の職人だから叩き上げだったんじゃないかな。本郷に<みよし木工>(字不明)ってあるんですよ。今でもあるんですけどね、そこの出なんですよ。で、年(季)が明けて、従兄のお父さんとこ行って、そいで一緒に仕事やってたの。それで別れたの。(そっくり?)言われますよね。(お従兄さんは三味線の見台を作ってるけど?)みんな同じなんだけど、仕事の注文だから。要するに箱が来れば箱、わたしは三味線箪笥やなんかでも全部やります。

鼻ん中、真っ黒
(真っ黒い天井がいかにも時代もの?)これはね、今みなさん来るんでわたしやめちゃったんだけど、ほんとはこれから燃やして、材料をぜんぶ狂い取るんですよ。焙る、七輪でね。だからみんな油煙が上へいっちゃう。(指物屋さんはみんなそれやる?)だって買った時はぜんぶ狂ってますからね。たとえば、こう(板を指で叩いて)やって調べるでしょう? それでガタガタするやつがあるわけですよ。どこが高いかすぐ分かるわけ。そこで焙って、直して、ガタガタならなきゃいいわけ。それで冷えるまで置いといて、それから使う。だけど、狂いだけ取るためには、高いところを減らすでしょ? そうすると薄くなっちゃうのね。平らなものをスーっと削るぶんにはそう薄くならないし。それでほら、同じ厚みに削りますからね。だから、しょっちゅう燃やしてますから、もう終わったあと鼻ん中、真っ黒ですよ、煤(すす)。

電灯じゃなきゃだめ
電灯じゃなきゃだめなんですよ、蛍光灯じゃ。もう色がわかんないでしょう? まずね。で、線がわかんない。白いとこに引くからね。で、わざわざ下に置いて、陰を作って見るんですよね。(その鉋は?)音がいいでしょう? 切れないとこの音しないんですよ。これわたしの十五ぐらいの時から使ってる鉋ですよ。やっぱり使い慣れてるといいですね。(カメラマン:すみません、時計を外して・・・)ああローレックスが光っちゃって! ハレーション起こしちゃって。おもしろいのあるんですよ、鉋でも。こんな鉋なんかね、学生の鉋、学校で大工道具に買わされたやつ。これだってわれわれが使えば・・・。だって、鉋の台からみんな直してやるんですからね。じゃないと削れませんからね。(なんかと刃物は使いよう?)へへへ。なかなかねえ、わたしもねえ、勉強ができないからねえ、どうしてもこういうものやるようになっちゃうのよね。(板を押さえる左足の親指は修業で使えるようになる?)なります。だけど、動くと足つっちゃいますよ。これ仕上がるまでに何回けずるか。

桐と桑
桐っていうのは、ぜんぶ細かいもの(材料)を接(は)ぐでしょう。幅広いのはあっても銘木になっちゃうから、だめだねやっぱり。(桐もいろいろある?)ええ、ありますね。岩手、秋田、それから三陸のほうですけどね。あと中国(※外国)もあるけど、そんなのわれわれには使えない。けっきょく箪笥の芯材とかね、そういうものに行っちゃいます。(目が違う?)もうぜんぜん駄目ですね、目も無いし。(桑も使う?)やりますよ。(桐と桑は性質が違う?)木質がもうぜんぜん違う。片一方は固いしね。それでもう、きれいですよね、桑はね。(桑は茶色くなる?)なる。高くてなかなか注文が無いんです。(これは桑を貼ってある?)そう、貼ってあるんです。一分(ぶ)で十枚取るから一厘ぐらいか、(材料を手に)薄いですよ。(そんなに薄くする!)これまた削るんだからね。それが付板(つきいた)っていうんです。だから、われわれのはベニヤとは違うんです。桑の大木をこうね、漉いて取るんですよね。バーベキューじゃないけど、煮ちゃって、ぐるぐる廻る刃物があって、そこからスーッスーッと取れる。だから束になってますよ、買うときは。だからぜんぶ同じ木(目)ですよ。それが今もう一枚、今まで二、三百円だったのが、千円以上するんじゃないかな。こんなちっぽけですよ。それで一枚、二枚買えないでしょ? 二十枚、三十枚取れちゃうからね、こんな太いんだったら。それぜんぶ買わなきゃなりませんから、もうすぐ何万ですよ。

女房に作ったやつ
みんな注文で売っちゃうから無いですよ、うちはほとんど。さっきの七杯抽斗(ななはいひきだし)は女房に作ったやつだから、売ることできないから置いてあるだけ。(奥さんに?)そうそう、何にもしてあげないから一箇作ってやろうって。

有名な人んとこ行ってる
(作るものは専門家向け?)そうです。歌舞伎関係とかね、あと小唄の師匠とか、長唄の師匠とか、端唄とかね、みんなそういった感じばっかりですね。(だいたい固定客?)要するに三味線問屋さんがあるから、そこへもう。(問屋は誰が使うか教える?)それは言わない、絶対。特殊な人は言うよ。これは美空ひばりだとかさ、そういうのは言うけどね。けっこうねえ、なんだかんだで有名な人んとこ行ってる。(ひばりも?)ひばり? ひばりはね三味線の箱。お得意さんが新橋なんですよ。そこの奥さんが美空のうち行って、わたしの品物ほとんどやってくれてたから。下り藤の紋入れたりね。これは義太夫の見台(けんだい)。ほんとうはね欅(けやき)で作るんですよね。ものすごく重いんですよ。唸ってやるでしょ? 手をこうやってやるでしょ? だから重い。これは持ち運び用に桐で作ってくれって言われて、ぜんぶ自分で寸法出して。(抽斗がある?)そう抽斗になって、外したものが全部ここに入って。今でも、こないだちょっと行ったら喜んでた。便利でいいって。これが合引(あいびき)っていって、三味線するときに座るでしょう? 正座椅子ですよね。これだって合引なんですよ。お弁当箱みたいになってるでしょ? 折り畳んでぜんぶ中に入っちゃう。(これは昔からある形?)そうですね。だいたい指物っていうのは、ま二百年ぐらいでしょう。(こういう折り畳むのも?)これはだいたい明治の初期ですよね。

三杯以上はイヤ!
(これは何を入れる?)それはね、三味線屋さんの糸を入れる、売るのにね。それも特注なんですよ。三十年ぐらい前に、当時それでも四十万ぐらいかな。今だったらもう百万は過ぎちゃうでしょう。うちはほら、ベニヤ使わないでしょう、ムクでしょう? それで全部お揃いの木地つかうでしょ? で、金物も結構いいの使うからね。やっぱり今だったら百万はいっちゃうな。うちでせいぜいやったって(安くしても)八十万ぐらいは最低ですよね。(作る時間は?)それ作るんだったら、半月ぐらいかな。半月あれば出来ますよ。(抽斗が十五杯?)そう十五杯でね。もう、三杯以上はイヤ! 難しいから。まあ機械でやる仕事は別として、われわれが手でやるのは難しいんですよ。ぴったりやらないと、すき間が空いたらだめとかね。(イヤは腕の見せどころでは?)うん、そうだね。だから結局、そういうのを何とかこう、仲間に見られるのイヤでしょう? 「なんだこんな仕事しやがって」って言われるのイヤだから、みんなやるわけだ、ピチッと。仲間に頼まれるのいちばんイヤなんだ、だから。どんな品物でも、どんな安いちっぽけなのもだめ。

女房もぜったい部屋に入れない
あとはねえ、宮内庁のやつ。それだけはもう女房もぜったい部屋に入れないからね。考え込んじゃってだめよ、難しいやつばっかり持って来やがるんだから。(どんなもの?)うーんとね、今まではね、毎年歌会でうたうでしょ? 歌を。そうすると色紙に二枚書くんですよ、歌をね。それを入れる額、わたし作るんですけど。それを各国の大使にあげるらしいんですよね。それをもう三十組ぐらい作ったかな。それとか、ここに万葉集の箱があるのよね。宝石を入れる箱も作ったんですよ。それが八角でさ、うちは手でやってんだから八角なんか、馬鹿なのにさ、角度なんか出ないじゃん。それを一生懸命つくったんだけどね。結構ねえ、よく出来た。これがね、万葉集入れるの。ふつう作るとわたし自分のさあ、焼き印押すんだけどね、こういうの押せないのね。宮内庁とか博物館、押せないの。地方の博物館で、なんかすごいの入れるんだって作って自分の判子押したらさ、「だめだよ中西、判子を入れちゃ」って、しょうがねえ削って。(笑)箱が主なんじゃねえんだ、中身が主なんだから。主役は中身なんだからだめだって言いやがんの。冗談いっちゃいけねえ、おれは箱屋だって、ねえ?

昔の本を見て
これは有名な神社の宝物殿に入ってるんですよ。ここに一枚八万円のね、和紙があるんですよ。それが何十、何百枚入るか知らないけど、そこに入れるんですって。それ書いてあるんですよ、もちろん。(古文書みたい?)そうそう。それで「中西さん、これ見られないよ」って、そこの宮司しか開けられない。大変でしたよ、これ作るのに。(型をくれる?)自分で出す。(考える?)そう、わたしが。だいたい中の物がこれくらい入るものだよっていってさ、で相談して、じゃあこういう風にやろうか、こういう風にやろうか、じゃこれにしようって決まっちゃう。(伝統的な形を踏んでる?)だいたい踏んでます。一応、昔の本を見てさ、こんな感じでやったらどうだって。そしたらね、これを見たんだって、ほかの神社の宮司が、これよかいいやつを作ってくれって頼まれたんですよ。それが刀の鍔(つば)。それが一つの引出しに十五枚入ってね、五段か。あそこらへんで入れる刀の鍔なんて、そこらへんだったらもう五十万、百万ね。中に金の細工がしてあるからね。

うちはぜんぶ特注品
(特注品が多い?)うちはぜんぶ特注品です。既製が無いから取材で困っちゃう。(必要なだけ作るのが合理的じゃ?)そうですよね。ほんとはさあ、既製のもの作りたいんだけどさ、どんなものがいいか、なかなかわからなくて、私もさあ。けっこうデパートなんか行って、見るんだけど、あんまりねえ、いいの無いんだよね。いろんなこと考えるだけは考えるんだよ。ああいう品物、こういう品物。ただ、なかなかやれないのね。もう手が出ないやつはみんな途中までやって、風呂敷にくるんであるわ、階段に。(笑)(銘を入れる?)ああ、そうですね、焼き印がある。指物師 美佐五郎って書いてあるだけかな。(美佐五郎?)おやじがね。だから二代目を一応もらって。正夫よりか美佐五郎のほうがいいでしょう? 感じが、語呂が。

昔は喧嘩だったね
こういった仕事やってると、いろんな人との付き合いがあるからいいですよ。お得意さん以外に、個人で来るお客さんって多いですよ。でも昔ほど忙しくないけどね。こんな時代だものね。(息子さんも修業を?)たいしたことない。三年、三年かな、二人。ま一応、基礎だけは覚えとけって言っといた。(また戻る?)もちろん、うちが仕事が忙しくなればね。ひと月ぐらいやれば勘が戻ってくる。わたしでも十五、六だからね始めたの。で、途中いなくなったり、家出なんかしてさ。だから従兄に言われんの、「お前いいな、出たり入ったりして仕事やるんだから」。(笑)(仕事は切れずにある?)切れずにはある。そう、ほとんど毎日あるね。ところが今までさあ、五軒なら五軒問屋さんもってるでしょう? そうするとほとんどから来てたけど、今はもう一軒なら一軒だけだよね。で、途中でたまたまほかのが入ってきて。そんな状態になってる。個人の三味線屋さんも何軒かあるけどね。でも、ひとりじゃさばききれないですよ。まあ、われわれの仕事だから、向こうでもほら、手でやってるのわかってるから、焦らないからまだいいんです。昔は喧嘩だったね。もう忙しくて間に合わないでしょう? おやじと二人でやったって間に合わないんだから。そうするとお得意さんが来ておやじが怒られてるじゃない。そうすると俺も若いから短気だったでしょう、「てめえ! 出来ねえものは出来ねえんだっ!」。いくらやったって、俺なんか分かるじゃない手順が。明日の何時までっていったって出来ないんですよ絶対に。で、喧嘩したことがある。今だにそれ番頭さんに「お前とやったなあ」なんて。

職人のつける値段
三味線が売れないね。時代で古いお師匠さんが亡くなるでしょう? 家元が亡くなっちゃって、こんど若手に移るとさ、いいものがわかんなくなっちゃう。安いものって行っちゃうでしょ? そうすると桑のもんでも、おとといも電話あって、三味線屋さんが十万円でお客さんに売るってことはね、五万円なんですよ、作る方が。最低見積もっても、われわれ指物師に聞いて、だいたい八万前後ね。だからみんな言うんですよ、そりゃ偽もんだよって。わたしもね、直したことあるんですけど、やっぱり張り(合わせ)ですよね。(使う人がいいものがわからなくなった?)もちょっと若い人もわかってくれればいいんですけどね。あんまり安い、安いのほうへ行っちゃう。それも考えられないことはないね、われわれだって安いとこ買いに行っちゃうからね。 (笑)同じようなもんなんだけどね。日本のものは高いの買ってもらってほうがいいね。高いったって、職人のつける値段っていうのは商人さんと違うから、ぜんぜん安いですよ。

直しは儲かんないね
(修理もできる?)そうですね。引出しは抜き差しするもんだから減るんですよね。そうするとすぐ直してあげますけどね。壊れたとかってのは無いですよ。消耗品だからね、減るとこは減りますからね。なんたって相手は木だから。でも、直しは儲かんないね。材料が要らないんだ、物が出来てんだから。やらかくなればさあ、きつくすりゃいいんだから。そのときはほんのちょっとの材料でいいんだ。

昔は前金だった
(客は減る?)三味線屋さんにお客が来ないんだから、それだけ減ってるんだろうと思いますよね。ただ職人を遊ばせちゃいけないっていうんで、われわれのほうには仕事を出してくれますからね、在庫をかかえても。だからいいですよね。助かりますよ。前は、この次やったらこれ、その次それ、だいたい決まってたの。今は持ってってから、じゃ今度これやろうよとか。そういう時代になっちゃった。昔は前金だったのよ。「中西さん、つぎこれね」って前金ですよ。そうすると遊んじゃうでしょ、うちのおやじ。たまったもんじゃなかったな、あんときはもう。それで、「あれちょっと材料が乾いてないんで、この次の仕事なんかありますか?」って貰いに行った。(笑)職人ってみんな、そんなもんじゃないですかね。それでまあ、だんだんこんなになって来たから、「中西さん、じゃあ現金取引にしようよ」って。(現金だけ?)小切手なんか使わないですよ。もちろん手形なんか無い。

遅れりゃ夜やりゃいい
(時代劇を見る?)わたしも時代劇好きだけどさあ、バックに映るいろんな小物、あれが見たい。芝居見に行ってもそう、うしろの小道具見てる。で、帰ってスケッチしてさあ、うちでこんどああいうの作ってみようとかね、そういうのやってますよ。(時代劇は昼間から呑み屋があるけど?)われわれも呑みますよ。お昼さあ、だれかうちに来るでしょう? そうすると、じゃ行こうか、なんてさあ。ほらお客さん来るわけじゃないからさ。あと遅れりゃ夜やりゃいいんだ。(笑)


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