edocraft-header



うちは矢が専門なんですよ
伝統を守って
もう四十年ぐらいやってます
手の先と目が悪かったらもう仕事にならない
矢に正宗作という銘が入るんです
長くても短かくても四節
好みに合わせてあげます
切ってきて一年間は使えない
一日一本を作っているわけではありません
矢が相手に拾われて、また自分に射返される
たとえ矢が折れても、曲がっても
外人さんがジュラルミンよりこういう竹を好む
だから死ぬまで勉強になっちゃう

English interview

Back to product page

 

うちは矢が専門なんですよ
(これ一本一本種類が違う?)羽根によって値段がぜんぶ違うんです。これがタカの羽根とか、これがウスビオとか、これがナカジロとか、イヌワシとか、全部違うんですよ。弓は専門じゃないんですよ。うちは矢が専門なんですよ。(矢は一本ずつ売る?)矢は4本でセットなんで、一組なんですよ。正式に言えば二本なんですけども、あと二本は予備という形なんですけどね。だから競技用では四本がセットになってる。

伝統を守って
(弓といえば戦国時代という感じ?)そうです。原始時代から弓ってのはあるわけで、動物を射って肉やなんか食料として使ったときが弓の始まりでしょうね。それから戦国時代になって唯一の、鉄砲のできる前ですよね、弓が武器になったんじゃないでしょうかね、ええ。それで鉄砲ができてからは弓はあんまり使わなくなりましてね。今、スポーツ化されちゃってるから。戦後、一時マッカーサーから日本の武道はいっさい禁止されましたからね。だから、その後ですよ、スポーツになりましてね、各学校、大学、全部いま、弓道部ってのがありますから。(でも、あいだは抜けずに来てる?)そりゃ抜けずに来てますよ、ずっと。弓道は日本古来のスポーツですから。(武道としては残ってた?)はい。でも昔からの製法やなんかが変わると、飛ばなくなったりするんですよ。伝統を守って、その仕事の工程やなんかをね、その通りにやっているという状態ですね。(自分も射る?)わたしはやります。そうしないと、どんな風に飛んだとか、弓の強さが合えばいいけど、合わない矢ができちゃうわけにはいきませんからね。

もう四十年ぐらいやってます
(何代目?)3代目です。(創業後?)百年。(隣りを指さして)わたしは先代の甥っ子になるんです。(それで苗字が違う?)ええ、わたしは秋山なんですよ。そうです、杉山の三代目。わたしはもう四十年ぐらいやってますからね、この仕事。(杉山)わたしは三十年。(秋山)わたしは今のおじいちゃんのその前から居ますから。作るものが好きでね。(失礼だけど何歳?)五十六、十五からやってます。(杉山さんは?)わたしは五十代だけどね、兄のようなもんだから、ずっと。(秋山)小学四年生んときから居ますから、わたしは。(笑)

手の先と目が悪かったらもう仕事にならない
(修行は何から?)うちはね、最初はこの、筈(はず)っていいましてね、昔は半弓(はんきゅう=小さい弓)矢場っていうのがあったんですよ、遊郭に。夏だと海の家とかなんかであったでしょう? 十本いくらで引かすような。あれでねえ、木筈っていうのが矢にあったんですよ。で、今は水牛になってますけど、それを毎日、朝から晩まで挽かされた。半弓矢場っていうと壊れるのはここだけなんですよ。一本飛ばして、あとから飛ばしたやつがかならずここを壊す。これを交換するのを、こういう鋸(のこ)で、これは引くんじゃなくて、押し切りなんですが、これが筈引で、特注で作らせてるんですけどね。(竹切りを何年?)まあ、三年ぐらいです。竹を火であぶって曲がりを直す荒矯め(あらだめ)、こればっかりやらされるんですよ。いいものになると三十回ぐらいひごくでしょう、安いものだと五回、十回ぐらい。この荒矯めがいちばん大事なんですよ。荒矯めをちゃんとやっておかないと、仕上げに苦労します。そうすると大変ですから、荒矯めは大事にやっときなさいよって、もう先々代のおじいちゃんから怒られました。荒矯めで五年ぐらいかな。荒矯めってのは、要するに真直ぐしなくちゃなりませんから、矢の基本ですよ。だから、曲がってることが分かっても、自分で直すことが出来ないとだめなんですね。爪乗りって、こう爪の上で回します。そうすると曲がりが分かるんですよ。だから弓の矢を作るのは、手の先と目が悪かったらもう仕事にならない、廃業になっちゃうんですね。(道具は?)手に合ったものを自分で作るんです。(何年で一人前?)まあ、その人にもよるんでしょうけど、やっぱり十年以上でしょうね。どんな矢の修理ができても、お客様が納得するには十年以下じゃちょっと無理でしょうね。(弟子入り希望者は?)たまに希望者のかたもいらっしゃいますが、今のところ募集しておりません。(今も二人で夜なべを?)やりましたよ。夜、シーンとした時の方が仕事がはかどりますから。

矢に正宗作という銘が入るんです
やっぱり良いものになると、ここに正宗作という銘が入るんです。だから、その銘を汚さないように、ずっと伝統を守ってやっているわけなんです。だから日本全国で弓矢で正宗作って言えばうちしかないんです。(みんなそれぞれに銘が?)あります。弓は弓だけの専門がいます。うちは矢師ですから。(日本全国でどのくらいの人が組合に加盟?)百二、三十でしょう。で、東日本弓道協会というのが神奈川から北海道までで一つのブロックになっている。あとは関西地区とか、静岡地区とか、九州が二つ、三つあるんです。東京では何軒も無いですね。うちのように矢を作ってるのは四、五人でしょう。あとは弓専門とか、かけお専門ですね。このように、大きく言うと三部門に分かれているんです。かけ師さん、矢師さん、弓師さん。やっぱり代々的な伝統があります。だからかけ師さん、弓師さんは矢を作ることはできません。技術がまったく違いますから。(全部手作り?)ええ、もちろんそうです。

長くても短かくても四節
羽根のつく前は箆(の=矢竹)って言うんですね。だから羽根がついて始めて矢になるんですよ。箆も節陰(ふしかげ)とか一文字とか、いろいろあります。今主流になっているのがイソワシ、イヌワシ、クマワシなんです。現在、日本の鳥はほとんど取れません。今はアメリカから入ってくるアメリカンターキーが主流になっています。アメリカはクリスマスに七面鳥が欠かせないので、その羽根が入ってきます。(ほかには?)今はワシントン条約にかかってしまうので日本の鳥はほとんど獲れません。しかし、七面鳥などでも竹は良い物を使えば、そんなに狂いは無いので影響はあまり無いです。(材料は無いのに仕事する?)そういうことですね。だから羽根は安いものでも、竹はいいものを使えば、そんなに狂いが無いから影響が無いんですね、安い七面鳥を使ってもね。(竹はどう?)竹は関東の竹を使います。理由は、寒い所の竹だと節が詰まって竹が伸びない、逆にあたたかい所の竹だと節が全部伸びちゃうんです。この節というのは全部決まっていて、長くても短かくても四節あるんです。、これが日本の弓道の決まりなんです。これが今言った通り、北海道の方だと節の間が全部詰まって短かくなってしまうと、背が高く、手の長い人には使えないことになってしまうので、そういったときには同じ四節でも長い竹を使用します。この四節とは、射付節(いつけぶし)、篦中節(のなかぶし)、袖摺節(そですりぶし)、羽中節(はなかぶし)。四節ににも理由があり、五節とか六節とかになると良い矢には使えません。同じ所を狙えば、同じ所へ飛んでいく矢にするため、上がり下がりのバランスも考えて作る、これが技術なんです。だから同じような節で、同じ目方で、同じバランスで作るんです。目方は今で言うグラムで、匁(もんめ)といいます。形は同じでも、重くては落ちてしまうし、軽すぎれば舞い上がってしまう。(四本セットで揃わないと駄目?)ええ。二本あればいいのですが、十五間先と、遠くへ飛ばすので、競技用は四本ということになってます。

好みに合わせてあげます
学生さんは、平均一本二千円くらいからです。結構安くても丈夫ですから。竹じゃなくジュラルミンの金属など。だからこれは竹の長い工程が無いわけです。(ジュラルミンのも作る?)全部やってます。注文も多いです。巻く糸の注文も、赤とかピンクとか色々です。(好みで頼める?)ええ、好みに合わせてあげます。修理もです。羽根を一枚取り替える修理のときも、好きな色の矧(は)ぎ糸を巻きます。これは絹糸です。このように羽根などは修理できます。しかし、篦(の)は良いものを作っておかないとだめです。これが生命ですからね。これを作るのが技術です。ただ、一生ものっていうのは無いんです。使っていればだんだん細くなるし、折れてしまう時もあるんです。折れてしまった時はつなぐんです。竹というのは穴があいているので的(まと)の砂で擦れると、自然と折れるんです。その時はその部分からつなぎます。(修理はきく?)できます。羽根の中で折れれば、羽根の中でつなぐこともできます。

切ってきて一年間は使えない
(材料の竹をどう使う?)一年の竹は柔らかくて駄目なんです。ですから、身が入ってくる二年半か三年くらいの竹を使います。(身が入るって?)竹の肉が厚くなる事です。つまり空洞が細くなった竹です。釣竿は中を削るけど、矢の場合は外側を削っていくんです。(切った竹はすぐ使える?)山から矢篠(やじの)を切っても一年間使えないんです。一年間毎日干して、入れてを繰くり返し、そして乾燥して白い竹になるんですよ。次は釜火入れ、荒矯(あらだめ)といいます。そして今度は節を削ったり、石で磨いたりします。それで色を焼いて、この様な色になるわけです。染めるわけではなく、焼くんです。炭のトンネルで焼くのですが、この釜仕事となると一日仕事になってしまいます。この時、曲がりを見ながら仕事します。それから木賊(とくさ)で磨いたりします。(それは飛び方に関係がある?)あります。それは弓の強さに合う矢を作ってあげなければならないので、木賊とか石で何百回ってこすって調整します。矢に、羽根を付けるまでには、この様な細かい仕事がいっぱいあります。(どの段階で四本揃える?)火入れをする段階から四本揃えます。良い品物になると六本とか八本とかやって、だんだん悪いものをさけていきます。

一日一本を作っているわけではありません
(作るのにどれくらい日数かかる?)物によって違います。何本かまとめて進めていくので、一日一本を作っているわけではありません。たとえば火入れをする時は、火入ればっかりの仕事で、仕上げまでいくわけではないんです。

矢が相手に拾われて、また自分に射返される
(正宗の伝統はどういうところにある?)杉山家はぜんぶ水戸藩で、唯一の武器である弓矢を扱う矢師さんは位が上の方なんです。それというのも、自分で飛ばした矢が相手に拾われて、また自分に射返されるということもあるわけです。その時、征矢(そや)といって、今は水牛の筈(はず=矢を弦に掛ける窪み)ですが、昔の筈は深く切ったつぶしてから飛ばすと、相手が拾っても矢師さんがいないと、すぐには射返せないことになる。だから絶対、矢師さんが必要なわけです。(悠長な戦争?)昔は、その征矢、鏑矢(かぶらや)など、大将が持つものがあるんです。それには名前と居場所が書いてあり、大将は十二本、雑兵は二十四本あり、飛ばすのです。なので、それを飛ばして相手が拾うと、"もう矢が無い"とわかってしまう。

たとえ矢が折れても、曲がっても
(価値の大きな部分は?)竹と羽根ですね。羽根は、オオワシなどはほとんど獲れないので価値ありますね。竹はお客様の注文で羽中に個人の名前を入れて、うちの正宗作ってものが入ります。(銘を打たないものもある?)あります。安いものは打ちません。名前を打つということは、一生責任があるわけです。これは焼き印ですから。たとえ矢が折れても、曲がっても、消えることはありません。

外人さんがジュラルミンよりこういう竹を好む
(最近は外国人も弓を射る?)多いです。武道をやってるかたが多いので。ジュラルミンよりも竹を好みます。本当は体も大きいので、丈夫なグラスファイバーがいいのですが、竹を好みますね。なので、特別長い竹の弓を作ったりもします。(増えてる?)増えてるんじゃないでしょうか。十年ほど前から大会もあるので随分うちにもいらっしゃいます。今は日本の弓道連盟から先生方を派遣しているので、外国でも審査が受けられますし。(アメリカは盛ん?)アメリカも盛んになってますが、ヨーロッパの方が盛んですね。(先生が日本から行ってる?)そうですね。今では道場を作って専門にやってる人もいるようです。(日本の弓道人口は?)日本人ももちろん多いです。今年は高校、大学も増えてます。学校はおもしろいことに、何年か前、テレビで弓道部のドラマをやったときには急増したんですよ、ははは。(ジュラルミンを使ってる学生が社会人になると?)人によりますが、ランクアップするかたが多いかな? (ジュラルミンが出るのは裾野が広がってること?)そうですよね、弓道人口が多くなることにつながりますかね。弓道は過激な運動じゃないので、女子の学生さんが増えてます。

だから死ぬまで勉強になっちゃう
(竹は命?)しょせん竹というのは曲がっているものを真直ぐにしていくわけですからね、最初からあまり狂いが来ないような竹を選んでるわけです。でも梅雨時や夏場になると狂いが出たりします。とにかく真直ぐすぎることは絶対にないわけですからね。だから矢師という職人は、死ぬまで勉強なんです。自分で、より以上の矢を作りたいとと思いますからね。矢が完成して、お客様に手渡して、使ってもらって「よかったよ」と言われると、そこで初めてホッとしますね。(修行して何年目でそうなった?)やっぱり二、三十年ぐらいですかね。全ての仕事をまかされた時。よその道場に行った時、師範代の先生に「矢を作ってみてくれないか」と言われ、それが認められた時はとても喜びを感じましたね。弓の強さに合い、なおかつお客様の技術に合わせて作るんです。そして羽根やっぱり三枚なんです。これが二枚だと魚の尾鰭みたいにペタペタすすり、四枚だと矢が遅いんです。こういうことを考えても、昔の人は本当によく考えて作ったということです。唯一変化しているのは接着の塗料の面です。昔は膠(にかわ)というもので羽根付けしてましたが、今はボンドなどです。とは言っても、だけど仕事の工程は昔から同じなんです。

Copyright 1999-2001 EDOCRAFT. Allrights reserved.
mail@edocraft.com