|
![]()
●学校から帰って来るとすぐ仕事手伝えよという話しになるわけですから(この道何年?)僕、四十年ぐらい。(歳は?)五十です。(何代目?)僕が三代目になります。(テレビで有名では?)そんなこと無いですよ。出てるだけでね。(で もお客が押し寄せる?)お蔭様で来ますねえ。でもね、手作りで、一個づつ作って、 機械と違いますから、数作ったからって知れてるんですよね。(そういう問題が逆に ある?)ありますよね。だって作る数はもう決まっちゃってるわけですから。夜中寝ないで仕事するわけじゃないでしょう? そうすると自然、売上げ決まっちゃうわ けですから。あとはいつ売るかの話だけで。(やっぱり夏前?)それはもちろんですね。(何人で作る?)うちの父と私と、それから若いのが三人。(五人?)はい五人で。(五人で一年にどのくらい作る?)いろんな種類入れてだいたい二十万ぐらいですかね。(いちいち吹いて作る?)一個づつ手で作ります。(何歳から作り始め た?)十二から始めました。(十二でも出来る?)いや、たまたまうちが風鈴屋さんだったですからね。学校から帰って来るとすぐ仕事手伝えよという話しになるわけで すから。 ●縁がこうギザギザになってますよねえ? (風鈴は世界的にある?)いや世界的じゃ無いと思います。中国と日本だけだと思い ます。風鈴の起源ってのは中国から来てますから。(よく見かける鉄の風鈴は?)あ れは南部鉄器で。(あれも日本?)はい。南部風鈴って言う。(地域によって風鈴も 違う?)鉄の風鈴、硝子の風鈴、それから瀬戸物で作った瀬戸風鈴。そんなもんです かね。あとは東南アジアに行くと貝殻がね、貝殻が風鈴って言うかどうかわかりませ んけども。(あのチャラチャラの?)はい、はい。(江戸風鈴の特徴は?)まず、材 質が硝子であるという事ですね。で、全部内側に絵を入れる。いわゆる色硝子を使わなくて絵で仕上げていくという。(透明の硝子で作る?)そうです。(全体が赤とか 白の風鈴も?)あれも全部絵の具です。(塗っている?)裏から。裏から絵描いてあ りますから硝子の艶も出るでしょう? 表に。(下の口の所はギザギザ?)はい。 これがよくみなさん不思議に思われるらしいんだけど、縁がこうギザギザになってま すよねえ? で、コップのようにツルツルにしないで、なぜこうギザギザになって るのかと言うと、硝子の管がこすっただけで音がするんですよ。わかります? (わざとギザギザに?)そうです、そうです。昔から江戸時代の人がこの部分をコッ プみたく焼き戻さないで、切ったまんまにしているっていうのは、風鈴って音を聴く もんですから、音を生かすためにわざとこういう風にしてるんだと。ですから、うち の風鈴の真似をして台湾とか外国で作らせて入ってくるのもありますけども、この所を焼き戻してあります。で、これは音的にあんまり良くないんですね。まあ聴き比べて頂ければよくわかりますけど。(目で見て耳で楽しむ?)そうですね。 ●車が多くなって「引き売り禁」となっちゃったり (昔の屋台の風鈴屋さんは今は?)やっぱり縁日が道路交通法の規制で無くなって店 が無くなったり、それから車が多くなって「引き売り禁」となっちゃったり。でも、なんか歌舞伎町近辺では結構何人か引き売りが出始めたって話聞きますもんですか ら。(その人たちはここへ買いに来る?)いや、うちじゃなくて問屋さんですねえ。うちに直かに来てもいいんでしょうけど、数が少なかったりする。問屋さん行けばいろんな種類があるでしょうし、他の物もあるでしょうから。昔から比べるとだいぶ変 わりましたよね。ただこれは時代の流れだからね、しょうがないんですよね。(時代の流れで風鈴は売れなくなった?)いやお蔭様でうちの方は売れてますけれども。 ●結構外国から注文が来るんですよ、英語で (風鈴を海外へ送るのは大変?)どうでしょうねえ。やったことないからわかんない ですけどね。(クッション入れとけば大丈夫?)そうですね、ただね一番怖いのは税 関で開けますよね。開けた後きちっと元通りにやってくれればいいんですよ。日本人 だときちっとやりますけど、いい加減にやると。(壊れちゃう?)よっぽどは壊れな いでしょうけども、運が悪いと割れちゃうかもしれませんよね。うちでジャパンタイ ムズとか取材で出してもらうと結構外国から注文が来るんですよ、英語で。来るんですけど、出して、もし途中で壊れたらお金のことも面倒だし、だから一切そういうこ と直かにはやったことは無いんですけども。 ●ぜんぶ音、違います(工場の床は土?)そうですね。土間って言いますね。(この硝子はどういう種類?)板硝子です。窓にあるんですけど。(窓のと同じ?)ちょっと厚めの板硝子を 細かく割って溶かす。それでこの硝子の棒に、こう巻き取ってくる訳です。それでえ え、よく見えないでしょ? ほんとの目分量で作っていきますから。大きい物は大き く、たくさん巻いて、たくさん空気入れれば大きくなるし、小さい物は少なく取っ て、少なく膨らませば小さい物になる。ここでちょっと膨らまして、針金で糸を吊るす穴をあけるわけですよ。作業は簡単です。丸く膨らませばいいわけですから。ただ し膨らませばいいんだけど、硝子の薄いとこと厚いとこをうまく付けたり、丸みをつ けたりすることによって音が変わってきますから。コップの肉を均等にすると、コッ プを叩くチンチンチン、ああいう音にしかならない。それをうまく中で共鳴させて音 を良くする、涼しそうな音にするためには、硝子の厚みを変えて行くわけですよ。 (みんな同じような音になる?)ぜんぶ音、違います。でも、音が低いのが好きな人 がいれば、高い方がいいよって人もいるでしょうから、そこでうまくバランスが取れててね。これも機械で作ってどこを取っても同じ音っていう風だと、お客さん逆につ まんないかも知れませんけど、手で作ることによってちょっと微妙な口の大きさ、硝子の厚さで音が微妙に違ってきますから。(吹く棒の方は溶けない?)溶けますよ。 長めに入れれば溶けちゃいます。それを溶かさないように溶かさないように、上だけ溶かすわけですよ。(でもだんだん短くなるのは?)それは切ってるから。風鈴とい っしょに、ほらこの部分だけ切るでしょう? これだけ減って行きます。ところが この棒が溶けちゃうと仕事になんないですよね。と言って、棒の先の風鈴が固まっち ゃうと丸くならないですよね。ここんところがね、短い時間の中で一個一個、一瞬で 表現して作っていくところがね。(中の硝子の量は一日分?)いえ、だいたい二時間ちょっとですね。だから四回替わる。こっち側に炉がもう一本ありますから、とっか えひっかえでやっていきますんで。(夏は大変?)うん。でも逆に夏場で注文が入っ てお金が入ってくると、ちょっとぐらい暑い方がね。 ![]() ●明日はもっといいものを作ろうと思うわけですよね (会心作は何個に一個できる?)できないですよね。「じゃあ満足してないのを売っ てるんですか?」って怒られましたけど、それはニュアンスの違いでね。職人ってい うのは今、今日作っているもので、明日はもっといいものを作ろうと思うわけですよね。 ●今、三匹にしたり、それから色を変えてみたり (時代で柄が変わる?)変わります。今だに金魚の柄は売れてますけども、金魚は昔は一匹だったんですね。今、三匹にしたり、それから色を変えてみたり。結局、うちの風鈴けっこう丈夫なもんですから、二年、三年当たり前で保っちゃうでしょ? そうすると「同じの有るわ」と言われると、じゃあ目先を変えて・・・。伝統的な柄はなるべく残すようにはしてますけども、多少変わってる部分もありますね。(風鈴の音が公害になる場合も?)はい、それも時代の流れだと思います。恐竜が絶滅しち ゃうと同じで、この社会に役立たない伝統工芸はやっぱり絶滅しちゃうんですね。でそれで絶滅しないようにどうしたらいいかという風に考えるわけです。で、マンショ ンが増えて表下げるとうるさいって言うんだったら、じゃあ家ん中に吊ったらいいじ ゃない?で、家ん中下げるためには、人間が動いた時、あるいはクーラーの風で鳴ってもいいですけども、家の中で見て楽しんだり、面白かったり、気持ちのゆとり が持てるような風鈴にすれば、いいですね。そういう意味で昔と多少違う、逆に、絵柄が重視されてくるという形になってくるわけですね。といって音が一番ですから、 音はやっぱり昔のように、こう気つけなくちゃいけませんけども。 ●うちは一年に一回転なんですよ 普通の仕事、商売って言うのは一年に何回もこう回転しますよね? うちは一年に一回転なんですよ。今、冬に作ってるのは来年の仕事ですから。だから今年の新しい柄がいいか悪いかっていうのは来年になってみないとわかんないんですよね。(黄色 いのは猿?)はい。あれは干支で作ったんです。申年の時に作って、寅年も。(じゃあ来年も?)はい、辰も作ったんです。 ●「ああ、昔は音聴いてたんだってさ」中国で風鈴っていうのは占う道具だったわけですよ。どっちの風が来て、どういう風が吹いたかっていうんで、これは吉だ凶だって。それが日本へ入ってくると今度は魔除けになるんですよ。風鈴の音で疫病神を家ん中に入れないっていうことでね。で、 それが江戸時代になって人心がが安定してくると、今度はわびとか、さびの世界になって来るわけでしょ? それが今にも残ってる涼の世界になる。ですから今後、風鈴っていうのが「ああ、昔は音聴いてたんだってさ」とかね。いや、四、五十年先じ ゃないですよ。もっと百年、二百年で、家ん中で音聴いて、その音によって自分が健康だとかっていう風になるかもしれない。それは時代の流れで、社会の文化の流れで 仕方の無いことですね。(ヒーリング風鈴?)そうそうそう。 ●小さい珠膨らますだけで三年ぐらいかかるんですよちょこっとやってみますか? 硝子まず見えないでしょうから・・・硝子ここにあ ります。こうやってくるくるくるくる、丸く回してみます。そしてこうやって膨らま します。こうやってどうしても固まりができちゃうんですよね。はっきり言います と、小さい珠膨らますだけで三年ぐらいかかるんですよ。(聞いて出来るものじゃな い?)よくコツって言うけど、これ洒落じゃなくって毎日、毎日コツコツやんなきゃ 駄目なんだよ、だからコツなんだよって。自分で掴むしか無いんですよね。指先でど う回してどういう風に膨らませたらいいかっていうのは、僕らが「今だよ、今回せ」 とかって言っても、自分で考えなくちゃ出来ないことですから。(刃物と同じで一瞬 が勝負?)潮時って言いますかね。今やるか、やらないかの所が難しいんですよね。 一年かけて一個作るならいいですけど、それでご飯食べるためには何十個、何百個作 んなくちゃいけないもんですから。(最後には目つぶってても作れるようになる?) まあ。何でもそうですけどね。あまり意識して作るよりかは、ほんとに意識しないで 自然に体が覚えちゃうっていうのが最高でしょうね。(二人で何にも言わないでどん どん作るのが面白い!)それはもう長年やってますとね。 ![]() ●あとで本人に聞いたら、やっぱり「後を継ぎたい」って言うんです (伝統工芸は大変?)それで食べて行くっていうのは大変なことですよね。それも一 言で言えば、うちもそうなんだけど時代遅れの仕事やってるわけでしょ? その中でお客さんに商品を今風に見せて買ってもらうっていうのは、いかに難しいかってこ とです。自分の子供に跡取らそうと思っても、あるいは若い人が入って来て、それにやらせようと思っても、それで食えなくちゃ責任持てないですもんね。(子供は?) うち三人いますけど。一番下が、この前テレビが取材に来て、跡継ぐんだなんて言っ てましたけど、あれはテレビに言わされたんじゃないかと思っていたんです。でも、 あとで本人に聞いたら、やっぱり「後を継ぎたい」って言うんです。面と向かって言われると、照れ臭い部分と、責任感とでとても嬉しいで気持ですね。上の二人は言わ ないんですけども親の仕事手伝ってます。学校から帰って来るとね。みんなそうですよね? 自分のうちの仕事っていうのは、子供はみんな昔は手伝わされたでしょ? 今あんまりそういう光景見なくなっちゃいましたけど。おつかいも行かなくなり、親に頼まれて「お前あれ買って来いよ」って買い物かご持って、昔は買い物行きました よねえ? 今そういうの無くなっちゃいましたからね。昔はいいとは言いませんけ ども、そうやって家族が形になったように思いますね。(職人には子供には継がせた くない気持と、継がせたい気持の両方がある?)それはね、何十年も仕事やってて、親あるいは他の親方から受け継いで自分なりに研究した技術があるわけでしょう? 先代よかもいい物を作ったと思ってるわけですよ、みんな。口では言わないけど。そ れを自分の子供とか後継者に受け継がせられないっていうのは、やはり「じゃあ俺の一生、五十年、六十年何だったのか」となりますよね。ただそこで後継者が「親方の 仕事やったって食えなくちゃ、やだよ」って言われちゃうと難しいですよね。そうい う意味ではうちの親父、現役でやってますけども、裾野を広げてくれたっていうのは 立派だと思いますね。自分だけ考えないで、広げられるだけ広げて「あとは二階建て 建てようが、東京都庁のビルじゃないけど何十階建てようが、それはお前の裁量だ よ」と言うところがね。そういう形で僕らも自分の子供に裾野を広げてやれるかわかりませんけども、そういうのが大事だと思いますね。 ●伝統工芸の職人の技が今の日本の高度成長を作った伝統工芸の職人の技が今の日本の高度成長を作った。原型っていうのは昔から伝わっ てた伝統工芸の指先の器用さじゃないかと、僕らこう思ってますから。決して高級官僚が作ったわけじゃないですから。そういうとこの部分をもっと大事にしてもらえれば、ほんとにもっともっと日本良くなると思いますけどね。(今の状態はそういうものを捨ててきた結果?)だって高度成長作った昭和二十年代の団塊の世代が今リスト ラで首かしげて、どうしようかって悩んでるわけでしょう? これ絶対ね、やっぱ間違いですよ。僕ら思いますけど、昔苦労した人が年取ってやっぱ楽しくなきゃおかしいですよ。僕そう思いますよね。一生懸命やって、バブルの時にいい思いしなくて、ねえ? バブルの時にいい思いした人ってほんの一部分でしょ? で、バブルがはじけたらあおりくらって、それで潰れちゃうってのは、これも逆に変な話でね。 と思いますけどね。すいません、なんか変な話に脱線しまして。(もう玉砕しても構わない職人も居る?)だからそれは、そういう風にさせちゃったんですよね、周りで。技術持ってる人が死んじゃったら技術を復活できないんですよ、はっきり言っ て。そうでしょう? それを一からやるって言ったら、五十年培って作った物はや っぱり五十年、百年かかっちゃうんですよ。と思いますね。なんか意見が合って良か ったですよ。だから、さっき「マスコミによく出てますね」って言われましたけど も、それは僕らも仕事だと思ってるんですよ。テレビだと一日潰しちゃって、どうもご苦労様で終わっちゃうわけですよ。でも、そういうのが結局、十年後、二十年後になって「あ、そういえばどっかで見たな」「硝子の江戸風鈴見たよ」という話になるわけですから。年取った職人さんに「いや、お前んとこちょっとテレビ出すぎで、あれ駄目だよ」って言われるけども、そうじゃなくって、仕事を一人前にやって、プラスアルファやらないと今の時代残らないんだよって言う。腕、技術っていうのは良く て当たり前ですから、職人さんっていうのは。で、マスコミさんに応対して、いろんな話をして、うちの風鈴のいいところを聞いてもらう、伝統工芸のいいところを理解 してもらう。それが自分らの子供あるいは後継者が継ぐ時に肥やしになるんじゃないかと僕らは思ってるんですよね |
|
Copyright 1999-2001 EDOCRAFT. Allrights reserved. mail@edocraft.com
|