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●提灯ができたのっつぅのは室町の頃
●昔からの蝋燭立てってのがまだ付けてんですよね
●描いてる人、いま東京で四十人ぐらい
●名前は非常に単純なんです
●だから何回かやっていると、先生のやっているのが見えてくるんですよ
●これから書く人っていうのは手習いができないですよね
●提灯の文字と千社札の文字、その筆の入れ方とか太さとか、大体同じなんですよ
●昔習字で「提灯屋をするな」って言うように、昔の人は知ってるんですけど
●提灯の場合には地が白ですから、逆に描いてかなきゃいけないんですよ
●お盆の提灯なんかやる場合は、やっぱり墨の方が照りはいいですから、摺ったりします.
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English Interview
●提灯ができたのっつぅのは室町の頃

(これは何提灯?)これは高張り提灯。高く張るから高張り提灯って言うんですけど、昔は上から下げるのはみんな高張り提灯って言ったらしいんです。これは昔、討ち入りの時に上杉が高張り提灯に火を入れて、上杉の家紋を入れてこう、やったという・・。高張り提灯っていうのは昔からこの形で、家紋入れて門の前の置いたりするんです。(そういう時は白地?)それはそうですよ。白地に黒い紋。(昔は戦う時も使った?)ええ、やっぱり家紋描いて。(でも基本的には明かり?)最初は明かりだと思いますね、はい。提灯ができたのっつぅのは室町の頃、それより前の鎌倉っていうとみんな松明(たいまつ)を持って。テレビの時代劇ありますよね? あれ見ると鎌倉時代だとやっぱり松明持ってる。文献にいくと室町とか書いてありますけどね。

●昔からの蝋燭立てってのがまだ付けてんですよね

(赤いのは?)あ、あれは赤提灯。(お店屋さんの赤提灯?)そうでしょうね。やっぱりこれだとなんか割と安心して入れるとか、そんな感じもあるでしょうし。また、赤だと目立つんでしょうね、ええ。ですから提灯は黒と赤と、その地の色と、そんなところがもう基本の色で。あとは、ちょっと色はさしますけど、他の色はあんまり提灯には使わない。(今、中の明かりは電気?)電気です。でも、これおかしなもんで、昔からの蝋燭立てってのがまだ付けてんですよね。部品で有るもんですから。無い方がいいんですけどね、なまじっか芯だけ付けとくと、そこに蝋燭付けて、燃えちゃったりすると危ないもんですから。取ればいいんですけど、なかなか昔から付いるもん取るっていうと「何で付いてねえんだ」って言われる可能性があるのかね? 良くわかんないんですけど。

●描いてる人、いま東京で四十人ぐらい

(お父さんが提灯屋さん?)うちはずっと提灯屋なんですよ。だけどうちは描くんじゃなくて、問屋さんみたいな形態だったようですね。(屋号は?)うちは大島屋恩田っていうんですけど、大島屋っていうのが本家で、もう無くなっちゃったんですけど、そこの七代目ぐらいの人がこっから車で十分ぐらいの所で提灯やってますね。で、その流れで何軒か大島屋ってあるんですけど、まあ大島屋だけだとわかんないもんですから、名前つけて。大島屋といえば提灯では名門っていうか、本流っていうか、そんなのがあるようですけどね、はい。(今、提灯屋の数は?)今、そうですね、東京で組合員が何名ぐらいいるかな? あんまり発展してく業種じゃないもんですから、前は六団体ぐらいあったんですけど、今その半分くらいんなっちゃいましたね。うちは東京中部提灯業組合っていうんですけど、台東区、荒川区、文京区、中央区、このへんが一番提灯屋っていうのは多いこたあ多いんです。描いてる人、いま東京で四十人ぐらい。で、東京の提灯屋ってのは提灯張るんじゃなくて描く方が仕事なんですよ。東京で提灯張ってる人ってのは一軒あるかなあ? 普通、提灯屋っていうと提灯張ってるんだという風に思われがちなんですけど、家紋描いたり、名前描いたりするのが東京の提灯屋の仕事で、提灯張るのは、結構昔から分業しちゃったようです。ああいうのも材料と労力っつうか、そういうのが無いと。今、水戸の方から来るんですよ。多分あの辺は和紙と、昔から水戸藩で奨励したのかも知れませんね。(水戸提灯?)水府(すいふ)提灯。(そうですか?)ええ。(水府は地名?)そうです、そうです。地名をつけて呼びますよね。小田原提灯ですとか。住吉提灯っていう言い方もありますし。(小田原提灯の特徴は?)あそこにあるような、ずん胴で、懐に入るような小さい提灯なんですよ。ああいう提灯っていうのは一番作りやすいんです。だからいろんな所の地名がついて、おんなじような形のが残ってるんですけど、なぜか小田原提灯が一番有名っていうか。箱根の山を通る時に御神木で枠作って、それを持ってると盗賊に遭わないとかね。そんなふうな謂れで売ったんで残ってんのかもしれない。あの辺がやっぱ一番箱根峠きついですからね、はい。

●名前は非常に単純なんです

弓張提灯は三種類あるんです。丸いのが手丸提灯、卵型のが御用弓張提灯、長いのが長弓張提灯っていうんですね。で、長弓張提灯っていうのは太さが四種類ありまして、極細、細、中太、大太、で、長さはみんな一緒なんです。名前は非常に単純なんです。弓張の手で持つところが弓の形なんですけど、弓で張ってるから弓張、高く張るから高張り提灯って。で、長さがみんな一緒なんですが、直径が違うんですね。直径が一センチづつぐらい違ってきまして、一番太いのはまあ大体十四センチで、十三、十二、十一というふうな、分けかたっちゅうか、分かれかたっていうか。(全国共通の分けかた?)これは東京ので、この細長いのは京都の方だと江戸張りっていうんです。で、一番細いのは「粋(いき)」、いなせといいましょうか、鳶さんが使う、あそこにある茶色んで「な組の梯子」って書いてあるのがそうです。でも、この極細のは一般的には使われません。中太っていいまして、大体直径が十三センチぐらいのが一般的に使われる提灯なんです。(長さの呼び方は?)尺が一時使えなかったんですよね。そん時にこれ一尺五寸ですから十五号ってことで、十五号七型という風に今は呼んでるんですけど。

●だから何回かやっていると、先生のやっているのが見えてくるんですよ

(どこで修業を?)泪橋(なみだばし)の大島屋です。(どんな修業?)最近の修業はあんまりたいしたことないですよ、ええ。いい先生だったもんで手取り足取り教えてくれました。(笑)(やっぱり描く修業?)そうですね。でも一番最初はね、提灯には、これはまだ付いてないんですが、上下に黒い枠が付きますよね? そこに色々部品が付いているんです。で、最初はそこに金物を付けたりするのが仕事です。あとは、先生が描いてくれる素描を塗ってく仕事があるんですね。この塗り方も色々ありまして、手勝手って、向こうは塗りやすいけど、こっち側って非常に塗りにくいんですよ。あと、上は塗りやすいけど、下は塗りにくいですよね。ですから塗りやすい方だけ塗ってひっくり返すと、今度塗りやすい方が残ります。それで塗って完成させるという風な、それがやっぱり早い方法っていうか。次は紋を習うんですね。紋っていうのは難しそうですけど、大体紋は丸なんですよね。丸が基本で、丸を割っていって描いてくんですけど、ご存知のように半径で円を割ってくと六等分になる。で色々作業するとそれが五等分になったり、色々方法があります。コンパスは竹のがありまして、これで大体割ってゆくんですけど、うまく使えるようになるのが、ちょっと慣れないと。提灯がでこぼこしてますから。でも何回もやってればだんだん出来てくるんです。よく目で盗めとかっていうじゃないですか? でも、教えてもらっても出来ないんですよね。(笑)自分がそこまでいかないと、いくら教えてもらっても出来ないんですよね。だから何回かやっていると、先生のやっているのが見えてくるんですよ。だから盗めっていうのは、そういう時じゃないと盗めないっていうか、いやで教えないんじゃなくって、教えてもわかんない。だから、そこまでいけば、この技術は分かるよっていうようなことですね。でもやっぱり教えてもらった方が、教えてもらわないよりも、速さは速いですからね。私も先生二人ついたんですけど、いい先生に巡り会うっていうのは、やっぱり一番大事なことですよね。自分じゃわかんないですから。今、振り返ってみると、二人の先生、両方とも亡くなっちゃったんですけど、二人目の人がうまい先生でね。若いころは教えてくれなかったんですけど、晩年になって色々教えてくれたんですが、腕が違い過ぎるってのは悲しいもんで(笑)。(お父さんから教わったことは?)うちは商売的に違ったもんで、描く方じゃなかったですから。(でも提灯屋さん?)提灯屋なんですよ、ええ。安政の頃からって話があります。今、張って描いてるとなかなか仕事にならないっていうか、張るのも結構大変なんすよ。今、張るのは農閑期のアルバイトみたいな形でやってるようですね。だから先々は非常に難しい。だんだん専門でやるような人も増えてきたらしいですけど、こっちもやっぱり夏場の仕事ですから、冬場からたくさん作っとくわけではありませんからね。その辺で難しい点もあるらしいんですよ。

●これから書く人っていうのは手習いができないですよね

三社祭りの提灯だけは毎年少しずつ色変えて、ええ、大体五、六千は出るんです。(手書きじゃ追いつかない?)でも前、手書きでやってたんです。ですから、みなさん分担して手で書いていたんですよ。だから最初の、手習いっていうか、ほんとああいうのいくつも、いくつも書くと、非常にいいんですけど、今そういうのはみんな印刷になっちゃったもんですから、これから書く人っていうのは手習いができないですよね。(勉強する場がない?)簡単なものがみんな機械に変わっちゃうっていうか。まだ私ん時は手で書きましたんで、あれも色々と右と左のバランスで書いていくんです。あれも十個ぐらい書かないとね、調子がでてこないんですよ。(笑)で、巴っていう字も非常に簡単そうですけど、混んでるより簡単な方が、バランスとるのが難しいっていうか、雰囲気出すの難しいもんですから。アゲハ蝶だとか、けっこう手数としてはかかるんですけど、積み重ねてくもんですから、わりと順番さえ覚えてしまえば、そう難しくないっていうか。

●提灯の文字と千社札の文字、その筆の入れ方とか太さとか、大体同じなんですよ

(字体はいろいろある?)そうですね。基本的には、一般的に言われる江戸文字です。物の本によりますと、江戸文字って、大きく分けると、江戸時代にできた文字で、一番最初は歌舞伎の勘亭流なんですね。で、勘亭流は、その前は武士が使ってたお家流とか、わりとササーって書くのがあるらしいんで、それが変化して・・。勘亭流っていうのは歌舞伎の台本を書く文字で、あと看板なんかの太い文字なんですけど、台本書く文字はわりと細い草書みたいので書いてたらしいんですね。それが元んなって相撲の文字ですとか、千社札の文字ですとか、寄席文字っていうんですけど、寄席に掛かってるあれ、広く言うとその辺の文字がみんな江戸文字っていうらしいんですけど、狭い意味で言うと今認知されてるのは、勘亭流でもなければ、寄席文字でもなけりゃ、相撲文字でもなくて、神社仏閣に貼ってある千社札ってのがありますね? 今あんまり好まれてはいませんけど、あれは江戸の人の粋な遊びだそうで、関西というか他にはないんだそうですね。で、あれに書いてある文字を、一応狭い意味では江戸文字と言うふうなことで。歌舞伎、寄席文字とか勘亭流とかっていうのは関西の方にも当然ありますので。で、その千社札の文字を、昔は提灯屋が書いてたんですね。で、提灯の文字と千社札の文字、その筆の入れ方とか太さとか、大体同じなんですよ。筆の止め方とかね。だけど、どこが違うかって言うと、千社札は先ず線がこう引いてあって、その中に納めなければいけませんので、入れとか止めとかはいいんですけど、線があるもんで払えないんですよね。こう(左)止めなきゃいけない、こっち(右)も止めなきゃいけない。提灯の場合にはわりと制約がありません。その辺の違いがあるだけで、筆法っちゅうか、似てるんです。うちの方に来て、江戸文字で書いてねって言うかたは、千社札の文字を意識して言っているんだろうという風なことで我々は書いているんですけど、区別をつけるとすれば、提灯書くのは払いが違いますんで提灯文字っていうことで分けてはいるんですけど、はい。

●昔習字で「提灯屋をするな」って言うように、昔の人は知ってるんですけど

バラエティーを出するために色々な文字を使いますが、基本的に正面に大きく書くのは江戸文字っていうか、提灯文字っていうか、そんな文字を書かしてもらってるんです。あと、芝居に使うんで勘亭流で書いてくださいとか、寄席で使うんで寄席文字で書いてくださいとか。あれは相撲文字なんですけども、どこが違うかって言えば、太い文字は違わないんですけど、相撲の文字ってのは平らなとこに書きますんで、太い筆で一筆に書いちゃうんですね。提灯の場合には骨がありますし、丸さもありますので、一筆で書くと、墨が多すぎますと流れますしね、骨があるとそこに墨が溜まって流れますんで、なかなか一筆で書かない。素描というのをして、塗り込んでくという風な技法が提灯のやり方なんですね。昔習字で「提灯屋をするな」って言うように、昔の人は知ってるんですけど、(そういうことは知らない!)知りません?(昔の人じゃないから)そうですね(笑)。いやいや、提灯ってみんなそうなんですよ。「提灯屋をするな」はうちの方としては差別用語じゃないんですけど、やっぱ習字の世界ではいけないんだそうで(笑)。

●提灯の場合には地が白ですから、逆に描いてかなきゃいけないんですよ

文字だけじゃなくって家紋を描くというのが提灯屋の付き物です。紋帳(家紋を集めた本)ってありますよね? 紋帳って黒に白抜きなんですよ。あれはその紋付が黒ですから白く抜いてるんですね。提灯の場合には地が白ですから、逆に描いてかなきゃいけないんですよ。でも紋帳の全くの裏返しじゃないんです。(違う?)違うんです。これが一般的によくある、丸にかたばみという紋。これ黒で白く抜いてありますね、だから紋付はこれでいいんです。提灯の場合にはこれが逆になりますので、この白い所が黒くなるんですね。で、周りの丸ん中も、全くの反対だと黒くなるんですけど、提灯の場合には違うんです。その辺は先輩から、ここは塗っちゃだめだよと教えてもらうんです。ひと月に一回、提研会(ちょうけんかい)っていうのがありまして、諸先輩が色々教えてくれるんです。もう随分続いてんですけどね。(恩田さんでも習ってる?)いえいえ、まだ教わるべきものたくさんありますんで(笑)。(絵は描かない?)絵はねえ、二、三十年前は、開店の時に、畳半分ぐらいの所に、宝船に大入りとか色々文字を書いて、贈る相手の名前を書きまして、贈ったりする習慣があったんですよ。そういう絵を描いてる人、我々の業界ではいるんですけど、なかなかそこまで、ええ。

●お盆の提灯なんかやる場合は、やっぱり墨の方が照りはいいですから、摺ったりします

(墨で書く?)あたり鉢ってありますよね? すり鉢って、あたり鉢。あれん中に習字で使った墨の、おっ欠けたやつを買ってきて、それを入れて、おっきいしゃもじで、水ちょっと入れてガリガリガリガリやりながら摺って、いちんち塗る分ぐらいを一時間ぐらいかけて前は摺っていたんですよ。今はわりと塗料良くなりましたんで。お盆の提灯なんかやる場合は、やっぱり墨の方が照りはいいですから、摺ったりします。(浮世絵に使う墨は寝かす?)ああ、あれは寝かしといて、上澄みをとるんじゃないですか? 多分。だから臭いんですよ。膠が臭いんです、あれ。(これは墨汁?)これは水性塗料に墨汁を入れてるだけですから、やっぱり照りがありません。


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