edocraft-header

 
English interview
彫り手はほとんど居ないんです
(おかみ)文字。木の文字彫りなんですよね。(親方)職人さんとしては、全国でも少ないんですけどね。(表札とか?)ええ、表札もやりますしね。(おかみ)木のものだったら何でも彫れるんですよね、ほとんどね。ですけど、やっぱり一番多いのは戒名、書く人もたくさん居るんですけど、彫り手はほとんど居ないんですよね。(戒名は書く場合もある?)東京とか関東近辺は、ほとんど書いてあるんですよ、漆で。うちは彫って金箔を入れている、そういう仕事なんですよね。また、表札屋さんは表札屋さんが居ることは居るからね。(親方)でも意外と、向こう(関西)の伝統工芸の方からもだいぶ表札のことでうちにも問い合わせありましたけどね、意外と少ない。また、特殊な仕事として百万遍のお数珠とかに文字を彫ることもあります。それをずっとつなげるんです。(おかみ)奉納した人の名前を入れていくとか。(親方)でも、前にもハワイだとかロサンゼルスから一回、向こうの方の日本のお寺でね、位牌の文字彫りの注文が来たことあるんですけどね、昔。(何宗と決まってる?)いやいや、全部大丈夫ですよね。向こうの表通りの仏具屋さんから注文あれば、何でもやる形だから。ただ作品が無いんですよ、うちの方は。(出来上がれば納めてしまうから?)そうなんですよ。(位牌はお客が板を持ってくる?)お店の人が持って来ます。(おかみ)結局、窓口は仏具屋さんが一番多いんですよね。(仏具屋からの注文?)そうですね、一番多いのはね。あとはこう知り合いとか口づてで、直接みえる方もいる。そういう場合は、お預りしていますね。(親方)こういうの彫ってるの、もう東京都では今居ないですからね、ほとんど、日本でも、もう何人も居ないんですよね。(おかみ)機械もね、どんどん出てきてるんで。

上物が京都からとかも来ます
(何代目?)うちで二代目です。(お父さんから?)ええ、そうです。(長い歴史のある仕事?)結局、江戸時代とか鎌倉とかは、みんな彫ってあったんですよね。それで結局、東京の場合、書きという流れになっちゃいましたけどね。だから、京都だとかそういうのは彫りがほとんど。でもほとんど今もう彫り師が居ないもんで、ほとんど全部機械になっちゃったんですよね。手彫り師が居ないんですよ。(おかみ)だから、時々ね、上物が京都からとかも来ますけどね、いいものだと結局収まらないで来るっていう。あんまり来られても出来ないから、一人しかいないから出来ないんで、まあ今はちょうどいいかなあっていう感じです。機械がちょっと増えてきて。(逆に価値は増してきてる?)そうですね、逆にね、ほとんど職人さんが居ないですからね。京都の方でも昔二十人とか、そのぐらい居たらしいんですけど、もう今ではほとんど最後に近くなって来てんじゃないんですか。 (おかみ)彫り方が違うんでしょ。(親方)うん。ちょっとやり方が。(おかみ)刀が、うちの方は三角刀で、向こうは小刀で、やっていく手法らしいんですけど。(ひたすら字を彫る?)(親方)そうです、字ですね。(模様の唐草は?)そういうのはほら、また別なんですよ。(大切なのは?)文字彫りの時で、全体のバランスなんですよね、だから彫るときは、もうここの辺りなら辺りだけズーッと彫っていくんですよ。で、最後に全体に仕上がるっていう、そういう感じなんですよね。結局ね、昔はほとんどみんな彫ってあったんですけどね、職人が居なくなっちゃったんですよ、どんどん。職人が居ないからどんどん無くなっていっちゃうって形なんですよね。

うるさい、アラン!
(その賽銭箱は?)お施主さんが居て、この人のためにこれをお寺に寄付しますよって言って、お戒名を彫って、年号を彫って、お施主さんの名前を入れて、ご寄付する。書くとほら、将来的に消えちゃうんで、彫りたいって言うんですね。賽銭箱とかそういうのを作る職人さんはいっぱい居るんですよね、木地師で。結局、文字を彫る人が居ないんですよ。(おかみに)お寺のあれはどうしたの? 机の板は。(おかみ)ああ、きょう引き取りに来ちゃう。もう納期ぎりぎりなんで、すぐ持って行っちゃうんですよね(笑)。(犬が吠える)(親方)うるさい、アラン!

字はほんとに、これでいいってことはない
(書体は決まってる?)いや、もう結局、無いんですよね。もうその人の字になっちゃうんです。結局、決まりってのは無いんです。ただ、楷書でほとんどやります。(おかみ)業界では西村彫り、西村彫りって通っちゃうんですよね。(親方)結局、うちの字っていうので、彫る人彫る人によって全部字が違ってきちゃいますから。(修行は習字から?)朱墨で下書きするんです、ちゃんと。だから、お習字もできないと駄目なんです、彫れても駄目なんですよね。いや、字が書けても彫れないですよ。点一つ彫れないですから、素人の人じゃ。点一つ彫れないから、字になら無いでしょ、もうがちゃがちゃになっちゃう。(材料が適してないと駄目?)そうですね、適するとかっていうより、位牌はもう塗ってありますからね、もう生地まで届きませんから。塗りの下地とか、そういうのに左右される形ありますけどね。(塗ってある板に彫る?)(おかみ)そうなんですよね。(ごまかせない?)だから、何万円も弁償するときがあるし。(信じられない世界!)(笑)信じられない、まず。もうみんな仕上がってる状態でしか見ないから、もう1回勝負だから。(親方はお父さんを見てたから不思議じゃない?)そうですね、私はもうずっと見てるから。だから、結局どんどん居なくなっちゃうんでしょうね、職人さんが。(何歳から?)私は学生時代から、中学二年から仕込まれてましたから。(今は?)今、五十。もうすぐ五十一。それでもまだ駄目なんです。(だんだん腕は上がる?)いや(笑)、そうなればいいんですけどね。なかなかね、字はほんとに、これでいいってことはないですからね。(字は歳とともに変る?)なんて言うんですか、変えては来ますね。ある程度の形は崩さないですけど、少しバランスを考えて。いい字を見ればその字に近くとか、人の字を見てね、有ればそういうふうに「ああ、この字はいい字だから、こういう形にしよう」とか。これでいいっていう形が・・・。字はほんとにみんな見て、上手、下手がすぐ分かりますからね。(お父さんの字に似てる?)ええ、そうですね、まあ父の字にだんだん似てきますね。

その人その人によって字の感覚が違うんですよね
(この表札はきれい!)この人も上手だけど、うちの字じゃないんですね、やっぱりこれは。それは書いてあるやつを彫ったからね。その人その人によって字の感覚が違うんですよね。(彫り物の壁掛けを指して)あとは遊びでこういうのもやってみたんです、草書なんですけど。でも、これはね、あの彫ってるって感じが・・。近くに、こういう風に側に見ないと、感じが出ないんですよね。ただ書いてあるのと変わんなくなっちゃうんですよね。ただこういう風に板に彫るってのは、すごく難しいんですよね。(おかみ)やっぱり作品が無いっていうんで、何か作ってよって、じゃあこれやってみようって。(親方)台東区で表彰された時にね、なんか作らなきゃなんないんで、遊びでこれやってみたんですけどね。(なんて書いてある?)(おかみ)もうちょっとみんなの知ってるような俳句にすればよかったんですけど(笑)、私が書いたんです。(俳句を作った?)違う違う、私が書をちょっとやるもんですから。それを主人が彫って。(二人三脚でいい!)(親方)こういうのはほんとに、もう近くで見ると、ああ彫ってあるって分かるけど、遠くから見るとただ書いてあるかなって形になっちゃう。そうするともう、どこの人でもやる形になっちゃうんですね。味を出すにはちょっとこれじゃあ、あれかなって思うんですけどね。(おかみ)まあでも、素人受けはするんですよね、どっちかって言うとね。(親方)結局、書ければ彫っていけるんで、たとえば自分の作品を彫ってもらいたいっていえばね、書家の人たちとか、ちょっと書をたしなむ人なんかは喜ぶかもしれない。(それも撮る?)ええ、いいですけど(笑)、載せてもこれは。(お遊び?)あははは。それと、あとは自分ちのものだけでやるんですけど、傘の柄に文字を彫ったり。(おかみ)まあでもそういうのはね、先取り。(親方)何頼まれるかわかんないけど、彫ってくれっていう人も居るかもしれないですよね。(そういう人は多いかも?)意外とね、傘に彫るってこと知らない人多いし。(おかみ)お友達にしてあげると、すっごい喜ぶんです。(親方)絶対! 失くさないですから、えへへへ。(傘は引き出物にいい?)(おかみ)そうですね。結婚式の引き出物にはぜんぶ、お名前を入れてあれしますけど。(親方)だからね、わたしたちの結婚式のときにね、ぜんぶ名前彫ってって。折り畳み傘でしたけどね。それ金物でしたから、友達に頼んで、お客さんの苗字を入れて、それを引き出物にしたんですよ(笑)。(自分で彫って?)いえ、金物はちょっと彫れないから。それを友達で手彫り職人が居たから、そいつが全部やってくれたんです(笑)。

昔は色入れないほうが多かった
(金色を入れる技術は昔から?)いえ、昔は色入れないほうが多かったですね。そのままが多かったんですけど、昔のを見ますとね、金入ってるやつもあるんですけど、江戸時代ぐらいからじゃないんですかね。その前まではずっと彫りっぱなしだったんですよね。そうすると、位牌の場合は彫りっぱなしですと、そこへ水分を含むと、どんどん剥がれてきちゃうんですよ、漆が。だから、けっきょく目止めの形もあるんですよ、水分を入れないように。(九州へ行くと墓の字が金色だけど?)あ、そうですか、お墓に金。じゃあその位牌の感覚を墓石にまでやったんですかね。位牌の場合は水分含むと、どんどん膨れてきちゃうんですよ。昔の下地ってのは胡粉ていって、蛎の貝の粉を細かく砕いたやつで、塗るんですよね。その上に漆塗る形なんです。今と違って化学塗料じゃないですからね、どんどん水分含んできちゃうんですよね。そうするともう、ぼろぼろになってきちゃって、最後には字が無くなっちゃうんだけど、彫りですと生地まで彫ってあるから、字はそのまま残るっていうことなんですけど、今のは生地まで彫るっていうことがないですからね。(木もいいのでは?)ええ、いいですよ。やっぱり檜だと長持ちしますしね。(材料も自分で作る?)うーん、材料はねこれ、結局うちは文字彫りだけだもんで、材料を人に頼まなきゃなんないですよね。(お客が持って来ても仕方ない?)かと言って、その材料を仕入れられないだろうから結局、この間も伝統工芸の仲間から頼まれて、一回やったんですけどね、それやっぱり人に頼んで、表札の生地をこさえてもらったの。


中学からやらされていた
(前は東京に字を彫る職人がかなり居た?)いや、前は二人でしたね。(もともと少ない?)ええ結局、父の仕事も仏師だったんですよ。だからこういう仏像だとか、作品はあのいろんな所にあるんですけどね、ええ。それで昭和三十六年から、日展の方の師匠がちょうど位牌の文字彫りをやってたんですけど、忙しくてやんないって言うんで、それで昭和三十六年から父が受けたんですね。父の仏像はいっぱい、色んなとこに行ってんです。ここにあるのはみんな原型ですけどね。(彫刻もした?)こっちは日展。日展のほうはもう会員だったんです。だから三足のわらじ履いていた(笑)。父の作品は結構、有名なところにありますよ、うん。仙台の伊達正宗公の像とかね。あれも父が彫った。ただ、御開帳の日がいつだったけな? 十月だっかな、決まってるんです。(息子も見られない?)ええ。一回行って見してもらいましたけどね、どんなふうに飾られているのか。(西村さんは彫刻を?)ええ、できなかったですね。一時、両方やってたんですけど、位牌の字が忙しくなってきちゃって、どんどん仏像を修行をしている時間に食い込んできちゃったんでね。それで仏像の方は、じゃあもう仕様がない。あれはすごい期間がながいですからね、修行の。それで文字は中学からやらされていたから、もうある程度、出来るようになってましたけどもね。じゃあ文字で行けって形んなって。

せがれは左利きなもんでね
(跡継ぎは?)うーん、ちょっとね、せがれは左利きなもんでね、難しいかなと思って。(左利きだと難しい?)ええ、道具が、入り方が違っちゃいますからね。けっこう指先には力が要るんです。だから、右利きにならないと、ちょっと難しいですね。(字を書くのに左と右は関係ない?)いや、やっぱり筆の圧が違いますからね、右から流すのと左から流すので。隷書やなんかだったら、左利きの方が逆にいいんですけど、こういう楷書ですとだいたい右から左に流す形だし、その止めやなんかの力の入り具合とか、そんなのが難しい形なんです。(字はもともと右利きのもの?)そうなんですよね、ええ。(直すのは大変?)人一倍努力、必要になっちゃうんですけどね。

私も最初「うそーっ」て感じ
(書くのがすごく早い!)いえ、そんな。これはちょっとね、眼があれだから、ほんとは拡大鏡かけていつもやるんだけど。(縦の線をまとめてやる?)そうなんですね。縦でやらないと、一字一字やってると、みんな字がばらばらになっちゃうんです。だから流れに沿ってやらないと。(おかみ)なにしろ下書きの縦の線引いて、左と右を彫っただけで曲がって見えちゃうんですよ。(親方)だんだん眼が上がってきちゃったから(笑)。(おかみさんはしない?)全然できないです。(親方)できないです。うちは中学二年からやらされてもまだまだ、苦情やなんかだって来ますからね。(学校行きながら修業?)ええそうです、もう結局継がされる形でね、修業させられたもんで。それでずっともう。(卒業してすぐこの道へ?)ええもう高校で、大学行くよりか、仕事しろってね。(おかみ)こう出来上がったの見るより、彫るところのほうが面白いでしょう? こうやって彫るのって、私も最初「うそーっ」て感じ。(親方)わかんないですよね、みなさん。まずやってる人居ないから。(結婚した時もこの仕事?)ええ、そうです。(おかみ)もう10何年経ってからのね。(彫刻はしてなかった?)いや、彫刻はもう、十八で、二年ぐらい、二十歳(はたち)近くまでやったんですけど、もうどんどん仕事が入ってきちゃうんで、こっちの方が結局、供養する日が決められちゃいますでしょ? だから、昔はお盆とお彼岸にいっぺんに作ってたんですよね。だから、普段暇だったんで、そんときは彫刻ができたんですけどね。でももう今、お盆、お彼岸ていうのに、いっぺんに作るという習慣が今だんだん薄れて、四十九日に作るという形になったんで、一年間通しての仕事の量になってきたんで。(おかみ)今、納期みたいなんですよね、勝負は。期がかかると、お客様は「違う。書きで色つけるんじゃなくて、機械でいい」って。そんなにかかるとは思わないんですよね、ほら、もう亡くなってあたふたなさってるじゃないですか? だから四十九日なんてあっという間なんですよね。ただもう手彫りだと間に合いませんと言われたらもう、一ヶ月ぐらい、前までは待っててもらったけど、ほとんど駄目です。今はもうだから、二週間ぐらいで上げないと駄目ですね。(親方)けっこうこういうのやる人が居ないんで、もう機械で。お寺によっちゃね、もう機械でなんかやったら、浮かばれないみたいなところもありますからね。(機械でも出来る?)ええ、もちろん。機械だってそこにありますよ、ええ。だから、関西はもうみんな、手彫り師がほとんどなもんで、手彫り師がいない分どんどん機械が発達したんですよ。文字彫りの機械は関西の方から来たんですね。


Copyright 1999-2001 EDOCRAFT. Allrights reserved.
mail@edocraft.com