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百年くらい経っても、だんだん良くなるわけですよ   
われわれの漆刷毛は女の人の毛なんですよ
「あたしの生きてるうちは、そういう色にならない」
陶器に漆を焼き付ける    
その人は一から十まで全部教えてくれたんですよ
この箸はものすごい売れますよ 
ものすごく今売れてんですよ、これは指輪だけど  
中学卒業してすぐ奉公に 
今ね、こういう変わったもんじゃないと売れないんですよ 
鹿の角を焼いたやつなんですよ
本格的な、いいものっつうのは、墨で研ぐわけですよ

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Mr.Yasuhide Nakajima
昭和18年12月 8日 生れ
昭和56年10月18日 一級漆器製造技能士取得
昭和58年 9月 7日 東京都銘木協同組合感謝状受賞
昭和59年11月13日 日本民芸協団乾漆賞受賞
昭和61年11月19日  東京都知事賞受賞
昭和62年12月10日  江戸東京博物館感謝状受賞
平成 8年 3月15日 東京都知事感謝状受賞
平成 9年11月21日 優秀技能章受賞
平成10年11月15日 外務省海外広報課110数ヶ国に放送

江戸に幕府が移り、その周りに集まる大名に女子が生まれると、すぐに嫁入り道具として漆塗りの調度品をつくったといわれ、先代も何年か越しでこの仕事に挑んだそうです。十代目の父からその技を学び「漆は一生」との言葉通り、これからも美しくて、なにより丈夫で使いやすい品物を作るよう心掛けていくつもりです。

百年くらい経っても、だんだん良くなるわけですよ

この茶たく、銘々皿にもなる、これが私がやってる作品なんだけどね。(木は使ってない?)木じゃないんですよ、これは麻布(あさぬの)と和紙を、粘土に石膏を流し込んで固めて、あとで粘土を取り去った型に、何枚も重ねて貼って作るんです。六年くらいかかるわけよ、まともにやって・・・。そいで、こっちのやつが、まだ仕上げて一ヶ月くらいなんですよ。これは出来あがってから、もう三、四年経ってるかな? で、こっちのやつは、先代のやったやつで、これが百二十年経ってるんですよ。(百二十年!)だから、こういう風になっていくわけですよ、だんだん年数経つと。(変わっていく?)そうそう。(使ってなくても?)使ってなくても。だから、昨日来たお客も「漆は何年か経つと艶もなくなってくるし、白っぽくなる」ってね。違うんですよ。われわれ茨城から漆を取ってくるんですよね。ほいで自分で作るんだけど、この、日本産の漆の良さっつったら、もう、これがほんとの漆の良さなの。だから、百年くらい経っても、だんだん良くなるわけですよ。色から何から違ってね。匂いをちょっと嗅いでください。こんな甘い匂いするんですよ、本物だと。(発酵してるみたい?)うん、ほんとの樹液。こんなの使ってるからこれだけ良くなってくるわけよ。何十年経っても、本物つうのは。(どうして色が変わる?)やっぱり、漆っつうのは、水分と酸素、そういうものを吸収しながら自分で固まっていくんですよ。化学塗料っつうのは全部、硬化剤っつうの入れないと固まんないわけですよ。漆は、そういう硬化剤は全然入れないで、水分とかを自分で吸収しながら固まってくわけね。だから、一日一日こうやって硬くなってくわけ。(硬さも増す?)あ、全然違います。だからね、(叩いて)ほら、音が違うわけ。こっちの音、ボソボソとするでしょう? ここぐらいになってくると、もう。(カンカン言ってる!)ほら、全然違うんですよ、うん。

●われわれの漆刷毛は女の人の毛なんですよ

お客さんに品物届け行ったんだけど、これ見せたら、もう即、是非買いたいっていう形で。(作るのに時間がかかる?)だから作ったものっか売らないですよ。出来たもんか。だけど前からうちを信じてるお客さんは、じゃあ注文頼むよっつって、そら来るけど、実際の話、この品物は 出来上がってお客さんに納得してもらいたいからね。いや、こういうもの自身つうのは、わたしが説明してやっと売れるもんだから。(脱乾漆の脱は?)抜くってこと。型から抜くってことですね。普通は乾漆。(脱乾漆は作り方が違う?)同じですよ。全部同じだけど、要するに仏像のなかには脱乾漆で、たとえば粘土で型を取ってから、石膏流すわけ、で、粘土を取っちゃうわけですよ。石膏は固まりますでしょ? で、そんとこに麻布を貼っていくわけだ。で、型が抜けたら、石膏を壊して、今度は表に貼っていくわけ。だから正式な呼び方は脱乾漆なわけね。(品物の最大の特徴はやっぱり漆の質?)質。だから、昔っから弘法筆を選ばずなんて、あんなの全部嘘ですよ。われわれの漆刷毛は女の人の毛なんですよ。で、古くなればなるほど良いわけ。何でかっつうと、女の人生きてるうちは髪の毛に油分があるわけですよ。それが抜けていくわけ。すっと腰の硬い、ものすごいやりいい漆刷毛になってくわけですよ。われわれ刷毛っつうんだけどね。(漆用の刷毛?)なんたって物ですよね。材料から何からいいもの使わなかったら、なんだって駄目。だから、このグリンだって全部、化学で作った色じゃないんですよ。

●「あたしの生きてるうちは、そういう色にならない」

(年とともに色が変る脱乾漆は面白い!)これお客さんでも、冗談に、「いや、じゃあ、あたしの生きてるうちは、そういう色にならない」って言うけど、結構ね、年取ったお客さんが買ってくれたんです。こういうものを。こないだのお客さんも、「あたしゃ小銭はある」っつうんだよ。小銭あるってことは相当金あるってことなんだけど、「金残してったって意味ない」って。だから来てもう即だもんね。「ああ、これだったらいい」っつって、「あたしが死んでもこれだったらある程度大事にしてくれんじゃないの?」っつって。即、買ってくれましたよ。いま景気の悪いところでも、そういう人がいるんですよ。だからそれ当たればね?

陶器に漆を焼き付ける    

これ陶胎って言って、陶器に漆を焼き付ける。抹茶茶碗だけどね。(落とすと割れる?)あ、割れますよ、それは。だけど、またそれは直せる。

● その人は一から十まで全部教えてくれたんですよ

(代々伝わる型がある?)さっき見せた脱乾漆がそうだよね。あとは手作りだから、やっぱり多少違ってくるよね。その型に合わせてやるわけじゃないから。(型は一回ごとに作る?)そうそうそうそう、形は。だって壊しちゃうから。(五枚組なら五つ型を作る?)うん、まあそういうことですよ。(使い回しがきかない?)だからこういうのは商売にならないから。あたしが小僧奉公にいった店の親方が・・・俺も恵まれてたんだけど・・・昔は仕事を盗めって言うでしょ? そうじゃなくて、その人は一から十まで全部教えてくれたんですよ。その人から「渡り職人やってて教えてくれたところは一軒も無い」って聞きましたよ。「だけど、今はそんな時代じゃないから」っていう形で、うちの親父が知らないものまで全部教えてくれた。沈金(ちんきん)から蒔絵まで全部。(先代は親父さん?)いや、よく先代って書くのは、おじいさんでも何でも先代になっていくわけですよ、ずっとね。うちは十一代続いて、お袋と親父は養子に入ったの。中島家って、日本橋でやってたんですよ、九代目まで。その当時は小僧から職人が、五十人ぐらい居たって言うね。だって昔、小僧さんが田舎からみんな出てくるわけですよ。それで七年間そこで修業してやっと今の給料っつうか、もらえるような状態だって聞いたけど。うちの親父は気に入られて養子入ったっつってたけど。(暖簾分けした中島は他にもある?)無い、無い。

この箸はものすごい売れますよ 

なんで漆職人が出てこないかっつうと、うちは運良く恵まれていろんな物があったからいいようなもので、一からやったら大変でどうしようもないですよ。(今の売れ筋は?)売れ筋っつうのはこの箸、とかお椀。そういう一般的なもんですね。この箸はものすごい売れますよ。そりゃなんでかっつうと、これ修理が出来る箸なんですよ。ほんもんの紫檀で。ここまで摘める箸っつうのは無いんですよ。(おかしい!)おかしいっつうけどね、今滑ってしょうがなくて、お客さんがみんなそれを欲しい欲しいっつうんですよね。これでやってみてください。(箸の先で蒟蒻つまむ?)全然違うでしょ? そいでまた、これ修理ができる箸なんですよ。(どういう修理?)うん、例えば、五年位使ってうっかりして折っちゃう。だけど折れる箸じゃないんですよ、これは硬いねばりですからね、材料が。(折っちゃったの繋ぐ?)いやそれは多少短くなります。だけど、普通の箸から見んと、うちの箸は長いんですよ、女性用でも。だから、かなり使えるっていうことですよね。(なぜ滑らない?)昔っから紫檀、黒檀つうのは滑らないんですよ、材質がね。(ぎざぎざを入れずに?)面白いんだけど、触ってもすべすべですよ、先がね。(なのに?)うん、そうなんですよ。

ものすごく今売れてんですよ、これは指輪だけど 

ものすごく今売れてんですよ、これは指輪だけど。(指輪は何?)やっぱり乾漆で、珊瑚じゃないんすよ。これ、イヤリング、ブローチ。(手渡して)こいだけいい色、出るわけ。(頂いていい?)(笑)いや、お金さえ置いてけば。

●中学卒業してすぐ奉公に

今、あたしこういう仕事やって良かったなあと思うけども、昔は辛かったですよ、修業時代とか。(いくつから始めた?)中学卒業してすぐ奉公に、二年かそこら行ったでしょ? それから、漆だけじゃ駄目だっつって、そと店で三年ぐらい化学塗料やったわけ。だけどカシューっつうのが一番漆に近いわけよ。カシュー漆って。カシューナッツから油抜くわけだから、ある程度近いんだけど、足下にも及ばないですよ、漆の。だってこれはほんとの木から採るんだもん。あとは全部石油で作るもんですよ。これはやっぱり無理だよね。

今ね、こういう変わったもんじゃないと売れないんですよ 

(この指輪は木に塗った?)いやいや、これは乾漆。で、一回や二回塗ったんじゃこういう味わい出ないですよ。(何回ぐらい塗った?)だいたい三十工程ぐらいはしてあるよね。(はあ)うーん。それはプラチナなんですよ。こっちは金なんですけどね。あとこれもダイヤモンドが入ってるから、これも面白いんだよね。あとペンダントね。今ね、こういう変わったもんじゃないと売れないんですよ、不思議と。普通のやってたんじゃ、ちょっと無理だね。こういうもんだって、無いから買うんですよ、お客さんが。

●鹿の角を焼いたやつなんですよ

(それはなんの粉?)これ角粉(つのこ)って言ってね、鹿の角を焼いたやつなんですよ。(やっぱり手で磨く?)一番ラストは手ですよ。(角粉を使ったほうがいい?)使ったほうがいいです。これだけ艶が違っちゃうんですよ。(赤の深みが出る!)出てくるわけでしょ? だから。(漆は採るところから仕上げまで大変な仕事?)いやそうですよ。(年中やってなきゃ駄目?)だから、それだけ味わいが出てくるっつうかね、うん。だから、親父が角粉をとっといてくれたから有るようなもんの、買ったら今何万ですよ。(奈良の角切りで買う?)いや、漆屋にあるからね。それをうちの親父が買った。(角粉も無くなる?)いや、もうほとんど無いんじゃないんですか? (最後の職人?)もう俺の代で。「中島さん、あと継ぐ人いるんですか?」って、皆さん心配してくれるけど。だけど、実際には材料から何から無くなってっちゃうわけですよ。お椀だって、あと十年も経たないうちに、ほんもんのくり抜きっつうのは無くなっちゃうからね。

● 本格的な、いいものっつうのは、墨で研ぐわけですよ

今、研ぎ墨っつうのがだんだん無くなっちゃったからね。漆を研ぐ墨。中国の木を焼いて、漆を研ぐ墨に使うわけ。で、細かいほど高くなるんですよ。今、ペパーやなんかで研いじゃうけど、やっぱり本格的な、いいものっつうのは、墨で研ぐわけですよ、われわれ。その墨が今ほとんど無いってことですよね。


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