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(夫婦で仕事をしている?)来週から出張で、ふたりに分かれちゃうんですよ。今、一番この時期売れるんですよね。忙しい時期で。(時期的には秋?)もう最高に今、やっと夏が終わってこういうものする気になってくれたなあと思って。
(親方で何代目?)わたしで二代目なんですけど、親父が結局、本所の方で飾り職してまして。で、あの三月十日の大空襲で、焼けちゃって。ちょうど工場が船橋にあったもんで、船橋に引っ込んじゃったということで。(飾り職はどういう仕事?)昔でしたら簪から、いろいろな装身具。(その当時も七宝焼きを?)いや、どっちかと言うと金銀の方ですね。で、七宝は私が、昭和四十年代入ってそれからずっと、もうこれ一色でやってます。七宝一筋に。(もう三十何年?)はい。今考えてみたら、良かった選択だったかもしれませんね。(同業者が今でも少ない?)はい、はい。(お父さんがしていた仕事は?)もうやってない。七宝一筋です。
(七宝はどうやって作る?)金、銀、瑠璃、珊瑚、瑪瑙、真珠、玖瑰(まいえ)の七色を七宝って言いまして、釉薬の原料は主に硝子の珪石と鉛丹などですね。色は数百種類ぐらいあるんですね。うちには百種類ぐらいありますけど。それで今は、ここにもありますけど、百種類の色の組み合わせによって色を出してる。で、私の方はどっちかって言うと、透明色っていう色を使って色付けするのが得意としてんですよ。不透明、半透明、透明と、窯変とか、いろいろ釉薬の中にも分類がありまして、私は透明色を使って何度も色付けしていくというのを、自分なりに得意として仕事してます。(七宝の台は何?)主に銅です。銅の上に色付けするわけですね。(絵を描いてくみたいなもの?)そうですね、はい。(表面のでこぼこは何?)でこぼこはフリットって言いまして、釉薬になる前のものですね。(いろいろな組み合わせがある?)あとデザインは自分でこう考えるわけですよ。(同じものでなく、違うものを作る?)いやいや、そんなことはないですよ。もう売れ筋が決まれば、そのものを作っていく。だから、そこへ行くために、いろんなものは作りますけど。いろんなものを作って、お客様の反応を見て、で、売れ筋商品(しょうしん)が決まれば、主力に作っていくと、いうことです。(最後に焼く?)今はこういう小ちゃい釜で焼くんです。大きいのは工場にありますけど。(昔も釜で焼いた?)そういうことだと思います。それこそエジプトのツタンカーメンにも七宝が飾られているんですよ。ヨーロッパから渡ってきたもんですからね。(いつ頃?)ええと、もう昔の奈良時代、正倉院に納められているものは中国からので、日本では江戸時代に盛んになり、襖の引手など建築金具に見られますよ。刀にも装飾され、明治時代に入ると本格的になって日本の特技として海外に知られるようになったんですね。(昔から七宝という言葉もあった?)はい。仏教典に七宝という言葉が出ています。七色の宝石の美しさを表現したもので、日本では桃山時代のあとから七宝と呼ばれたようです。フランスではエマイユと呼ばれてますね。
(七宝はアクセサリー以外で何になる?)置き物、壁の装飾なんかがありますけど、あんまり儲からない、これは。手ばっかっしかかって。(一点もの?)うん。俗に作家っていうかたがいますよね? 上野の美術展に出す、ああいうかたがたのやってるのは展覧会に出展するための工芸美術としての作品なんですよ。私どもは装身具を中心とした手工芸品ですよね。工芸美術は儲からないし、私らもう職人ですからね、食べていくのを主力にしちゃっているから。(これだけの数のデザインを作るのは大変?)(おかみ)大変です、二人でもう、補充しているだけで精一杯です。(デザイン画を描く?)(親方)もう何十年やってますからね、頭の中に(笑)。(おかみ)残ってるのもあるし、どんどん無くなっていくのもありますし、回転が早いんでこういうのは。(ループタイなのに花柄?)だからどうしてもね(笑)、男っぽく作ってるつもりだけど、結局女物を作るのが多いでしょう? だからそういう感覚がね・・・そこのところなんだよね。そう言われちゃうともう弱いんだよね、えへへへ。(厳めしいのは七宝には向かないのでは?)だからもうこういう形でね、勝負するしかない。今そういうのが東京ディスニーランドで売れてんですよ。(フクロウ! 夜きらきら光って綺麗でしょう?)ええ。(商品名は?)ワンポイントアクセサリーって言いまして、コートと襟に付けたり。で、フクロウは縁起物なんですよ。デパートに売る時は縁起を書いたのを付けて売るんですけどね。
(売れ筋でも作り過ぎちゃいけない?)そうそう。やっぱり同んなじ物じゃ、やっぱしお客さまは納得しない。だけど世界で有名なルイヴィトンだなんだって、ああなっちゃえばまた別ですけど、やっぱしね、あんまりみんなが同じ物をしているのはね。(ルイミツハシを作れば?)あははは。(店のブランドがある?)無いですね。(作ればいいのに!)(おかみ)二人で細々ですからね、うふふふ。うちが作ってるの、名前無いんですよ。(いちいち名前付けていたら大変?)どんどん変わっちゃうんですよね。
零細企業の強みは、売れるものをさっとこう代えてそっちに流れて。(おかみ)数作ん無いから、ロスが無い。小回りが効く、さっと。二、三個作ってすぐそっちに、そんな十個も二十個も作りませんから。(問屋を通す?)いや、今やってないです。昔やってたんですけど、もう昭和五十年代入ってからはどんどん催事の方へ流れちゃって。だから今は取引先の大きいのは東京ディズニーランドさんや細かいところ。問屋さん納めはもうほとんどやってないです。(二人で行商?)そうそう、そういうことです。(お宅の品物は催事でしか替買えない?)まあそう、だから手紙出すわけですね。日本全国の帳簿がありまして、行くときは手紙出して、「行きますよ、行きますよ」って。何日から何日に催事にお伺いしますからって。(お客と直接つながるのは素晴らしい!)私らはだから、今度のインターネットを楽しみにしてるんですよ。世界、全国に売れる。(おかみ)わたしたち時代遅れだから、そういうのをみなさんがやってくれて。インターネットに載ってどういうふうにするか、自分も楽しみで。(それは嬉しい!)今までは全国に自分の物を持って商売しましたけど、それがインターネットに載って。海外の人は買っていきますよ。成田空港でもうち売ってますから、はい。
(おかみ)赤と白の。この椿はうちの得意です。帯留にするんですよ。ちょっと特徴があってね、お客さんが喜ばれるんですよ。普通の房がある紐、ああいうのも通る様にそこちょっと加工してあるんですよ。ふつうは帯留買っても、帯留用の紐しか使えないんですよ。呉服屋さんの関係で、横も縦も大きい紐を作ってるんですよ、それで普通に持ってる紐でも通るように。こういう事はデパートでないと説明できないからね。こんな帯留、良く売れるんですよ。うちの帯留が問屋入れると、だいたい三倍からしてますからね。
(親方が七宝を始めたときは修業をした?)いや、修行って言うよりもですね、何っつったらいいかな、飾り職の中に七宝の入る、ちょこっと入りますよね、あの簪なんかに。そういう技術は持ってましたから、そういうものを今度、七宝だけでやるという風に試行錯誤がありまして、それで何年間かちょっと苦労しましたけど。でまあ、何年か苦労して、で作り出して、時代も良かったせいか、波に乗って売れたもんで。で、商売しながら勉強していったっつう感じですね。(おかみ)成田空港が最初のきっかけだったね。お店出したんですけど、そこでやっぱり七宝が無いと言うんで。空港のオープンが昭和五十三年なんですよ。だから、ちょうどいい時にぶつかったんですね。勉強しましたよ、もう。(何が大変だった?)習わず、自分で勉強したからね。(お宅で開発した技術もある?)手描きです。形も図案も一点物なので、すぐ売れます。でも、時間がかかるので、ほかのものを作るのに追われ、なかなか出来ないんですよ。(こういうのは?)窯変七宝。(窯変の難しさは?)色が出ないんですね、同じのはいつも。その時によってね、色が多少違っちゃうんで。ちょっと濃かったり、色のバランスが悪かったりとか出ちゃうんですね。焼き物で赤ってのは一番難しいんですよ。釉薬をきれいに洗うと透明度があってきれいに焼けるんです。焼く温度は作品の大きさ、釉薬の種類によってちがいますが、大体800度から950度ですね。
(おかみさんは結婚してからこの仕事を?)そうです、ええ。(親方に教わって?)(親方)もう二人で、同時だったな、昭和四十四年。(この仕事は面白い?)(おかみ)大変な方が多いですよね。夏暑いでしょ? この窯のね。売れる新しい物を考えるのが大変なんですよね。いつも同じだとね。(作ることにはもう慣れた?)そうですね、作ることはね。(今まで何がヒットした?)どうだろう、やっぱり窯変かしらね。窯変七宝の釉薬はちょっと種類が違うんですね、成分が。でもね、これ売ってるし、やってる人は、窯変七宝のこの釉薬を持ってるんですけども、その色が出ないんですよ(企業秘密は何?)盛り方と、焼き具合もあるかな。まあ、やっぱり盛り方かな。(親方)この厚さね、窯変てのは厚さで、微妙に、あと配合というか、こう筆でやるんですよね、筆でぼかしの具合、それが手の具合だから。(感が大切?)(おかみ)そう。焼くのも感ですから。窯変だけは焼き方でもって色が変わってきちゃうんですね。それに、うちだけしか持ってない釉薬をかくし味のように使っているんです。(親方)だから、やっぱり窯変が一番うちのヒットだね。
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