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ええと基本的に作る職人ですよね
で、持ち扇っていうと大きさ、こうでなきゃいけないってのが無くて
元旦から仕事してましたからね
これ一枚ですけど、実は三枚合わせになってるんですよね
やっぱり何度も何度も失敗重ねて、これだって言うのを覚えるんですよね
小学校五年生から浅草へおつかいに行った、それから数えるともう四十年
指じゃ紙を折れませんから、もう足で踏んづけて
手元で一ミリ狂うと最後は五ミリぐらい
今その問屋さんもつぶれちゃって

English interview

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ええと基本的に作る職人ですよね
(何を作る?)扇子を。(骨も?)骨はね、滋賀 県が骨の産地なんですよ。そこからの仕入れ。で、紙はそれぞれ京都から取ったり、 自分の所で取ったり。(作業中の扇子を見せて)これはうちで貼るんですけどね。 (ほかには?)これは京都から出来上がってきた完全な仕入れ物。(完成した形で入 ってくる品物もある?)そうです。仕事はまず紙の下地から作って、で、それを折っ て骨を付けて製品になるまで。骨と紙は外部からの仕入れ物ですよね。あとは、こん な絵を例えば頼むにしても、やっぱり専門家がいますから、それはそちらにお願いし ますけど。(今、東京に扇子の職人はどれくらい?)ええとそうですねえ、横のつな がりってのは全然無いんですね。やってるのかやってないのか分からないのが四、五 人ですかねえ。(全く横のつながり無し?)無し。なんかで情報交換がねあればいい んですけどね。


で、持ち扇っていうと大きさ、こうでなきゃいけないってのが無くて
(扇子は春から売る?)五月頃から売り始める。(たとえば正月に買うものじゃな い?)べつに正月に飾ってもいいんですよね。(用途で作り方の違いがある?)え え、おめでたい時に使う祝儀扇子ってありますよね。それはだいたい骨の数決められ てるんですね。で、持ち扇っていうと大きさ、こうでなきゃいけないってのが無く て。基準はありますけどね。そこから大きければ小さくするし、小さければ大きくす るし。骨数も一本多い方がいいなあって言えば大きくしちゃうし。で、歌舞伎とか能 とかに使う物は一応決まり事なんで。

●元旦から仕事してましたからね
(松井さんは何代目?)ええと、二代目。(扇子屋になったきっかけは?)いや、う ちはたまたま親の代からやってたんで、しょうがなく跡やりましたけどね。(門前の 小僧?)小さいうちからもう、朝は早くから夜は遅くまで親をちゃんと見てるわけで すよ、毎日毎日。えらい苦労があるわけですよね。そんな苦労しても・・・なんか他 にいい仕事ないのかなあ。結局サラリーマン経験も何年かあるんですけど。人間関係 がどうも、時間で行かなきゃならない。(子供の頃に何が苦労だった?)まずそうで すね、長い間拘束されちゃうわけですよ、一個仕上げるまでに。特に急ぎ物が昔は結 構あったんですよね。元旦から仕事してましたからね。年末年始、そんなもん関係な くやらなきゃ間に合わんないんで。それでなんとかやって納めたんですけど。その割 にはそんなに得る収入って多いわけではありませんからね、手間仕事ですから。だか らあんまり親と遊んだっていう記憶が無いですもんね。(お父さんは仕事が忙しいと ピリピリして?)そんなこともありましたよね。とにかくこういう仕事ってのは家内 工業で、家族全員がなんらかの形で携わるわけなんですけどね。出来たからどっかへ 届けてくれ。あれをちょっと引き取ってくれとか。小学校五年生の頃から浅草へ行っ たり来たり。出来れば届けて、下地があればそれを取りに行ったり。和紙の百枚って けっこう重いんですよ。それをバス、電車乗って抱えて来るわけですね。で、邪魔だ 何だで、こう嫌な目で見られたりとかっていうのもしょっちゅうあるわけですね。そ こにありますよね。こんな形なんですよ。これ百枚ですから結構重いんですよ。これ 抱える具合が、下置くわけにはいかない。そのころ風呂敷でしたからね。うまく包ん で持てるようには持って帰るんですけど。そんなこともやなことの一つで。(今でも 家族を巻き込んで?)いや、今はもう自分だけで。まあよんどころ無ければ手伝って もらうこともありますけどね。(作るのは独り?)独りで。そんなことでサラリーマ ンやりましたけど、やっぱり上司が「これやれ、あれやれ」。「冗談じゃねえ、てめ えでやれって!」なんて。冗談じゃないよ。(何年で辞めた?)二年で辞めました。 結局、蛙の子はやっぱり蛙なんですよね。蛙しかなれない。(戻ってきた時はまだお 父さんもやってた?)やってました、やってました。現役で元気でやってました。

●これ一枚ですけど、実は三枚合わせになってるんですよね
(扇子を作るので一番難しいのはどこ?)ま、しっかり下地を作っとかないと、それ 最後まで響きますよね、当然。(下地っていうのは何?)こういう、地紙。これ一枚 ですけど、実は三枚合わせになってるんですよね。これが裏、これが表ですよね。 で、その間に芯紙ってのが入ってる。二枚だと、貼り合わせちゃうともう剥がれる所 が無いわけですよ。骨が入る所が無いんで。で、もう一枚重ねるんですね。三枚にす ると、その芯紙が表に半分、裏紙に半分、裂けるんです、和紙っていうのは、どんな に薄くても。(剥がれる?)半分に裂く。(もとは一枚の物を?)一枚では裂けない んだよね。それを糊付けすることによって、何枚か合わせることによって。(間に挟 んだ芯紙が裂ける?)芯紙が裂ける。だから必ず奇数枚数で。三枚、五枚とか。これ も今三枚合わせにしたんですよ。でちょっとこれぐじゃぐじゃってみて下さい。半分 に裂けましたよね、これ、こんな風に。その間に・・・骨はここを通るわけですね。

やっぱり何度も何度も失敗重ねて、これだって言うのを覚えるんですよね
持ち扇には持ち扇用の紙があって、踊り用には踊り用のまた厚い紙があるわけですよ ね。用途によって紙の厚さを変えて行くわけですね。で、持ち扇っていうのは頻繁に 開けたり閉じたりするわけですよ。ですから紙もある程度丈夫な物というか、和紙は 繊維が絡みあってけっこう丈夫ですよね? でも持ち扇っていうのは特に開けたり 閉めたり頻繁にやるもんですからね、それなりに厚さで強度を増したり。で、紙の厚 さによって、三枚合わせる段階で糊の濃い薄いっていうのを調節していかないと。た まに濃すぎちゃうとバリバリになっちゃうし、薄いとまた裂けてきちゃうんですよ ね。その糊加減も、その季節季節で多少濃い薄いとかっていうのも調整していかない と。(相当慣れないと作れない?)やっぱり何度も何度も失敗重ねて、これだって言 うのを覚えるんですよね。(それをお父さんから習った?)そうですね。師匠ですか ら。最初、紙はこんな状態なんですよ。これを貼り合わせて、まず裁断をして、貼り をして、干して乾かす。一週間ぐらい。でも、乾いたばっかりだとこういう状態なん ですよ。それを完全に平らになるまで上から石臼で。一週間ぐらいですね。(無理に 乾かさない?)ほんとの自然乾燥ですから。綺麗に乾くまで。(昔と同じやり方?) おんなじような糊の濃さでやるんですけれど、濃いと違っちゃう。(季節によっても 違う?)冬ですと暖房入れますから、ある程度計算できるんですよね、どのくらいで 乾くか。梅雨時ですと一週間で乾いたと思ったら、まだ一週間乾きませんからね。特 別の乾燥室でも用意して乾かせばいいんですけどね。仕事がしやすいのは冬。

●小学校五年生から浅草へおつかいに行った、それから数えるともう四十年
(作り始めて何年?)本格的に始めて、昭和四十三年からですから、三十一年。小学 校五年生から浅草へおつかいに行った、それから数えるともう四十年。その頃はまだ ほんの一部分だけですよね、手伝いって言うのは。(大変だった?)おしんじゃない けど大変なんだ。みんなが遊んでるのにうちの手伝いをしなきゃいけないとか、届け ものに行かなきゃいけないとか。(当時もここで?)もうずっとここです。(兄妹 は?)継いだのは私だけですけどね。(他の兄妹は?)居ますけど女ですからみんな 嫁いじゃって。(仕事の進め方は?)いち日は下地作り、地貼りって言いますけど、 そればっかりを百枚、百五十枚やるわけですね。で、次の日に乾いて少し落ち着いた 物を、さっき折りしましたよね、それだけ。次の日に骨付け、次の日に仕上げる。順 調に行って四日から五日。こういう形ですね。

●指じゃ紙を折れませんから、もう足で踏んづけて
寸法は五分(ぶ)刻みですね。一番小さいのが豆扇で一寸から、一寸五分、二寸、二 寸五分、三寸。その上に来ると今度お茶扇、五寸。で、持ち扇五寸五分っていうの が。六寸が結婚式の時にここに差しますよね、あの種の扇が六寸と六寸五分。女持ち は六寸五分。男持ちが七寸五分。その中間が男女兼用型って七寸。(最近は女性用が 大きくなった?)大きさは変わんないですね。京都のほうの布扇ってありますよね、 綿で作ったり絹で作ったり。あれだと七寸ぐらいなんですよ。で、これが高座扇で八 寸、噺家が使う。八寸ぐらいまでですね、持ち扇って言うのは。それから踊りの舞扇 って言います。それが子供用で八寸五分、それから九寸、標準サイズが九寸五分。で ちょっと大柄な人が持つのは一尺。あと上は一尺一寸まで。飾りですと一尺三寸。 (ずいぶん大きい?)そうですね、大きいのはありますよね。七夕に昔ありましたけ ど二メーターぐらい。広げるともう部屋一杯になっちゃう。指じゃ紙を折れませんか ら、もう足で踏んづけて。骨も竹を一本使ってそれ削って。(今もそういうの注文あ る?)いや今はもう無いですね。

●手元で一ミリ狂うと最後は五ミリぐらい
(紙を折る型はだれが作る?)自分で作りました。これを折るにはこの型。これを折 るにはこれ。大きいのにはさらにここに。(型は何でできてる?)やっぱり和紙で す。で、さらに上から糊を引いて、ちょっと頑固にするわけですよね。(折りなが ら)最初慣れない修行の時ってのは、これがぴたっと合わなくて、型が先に行っちゃ ったり、紙が足んなくなっちゃったり、上の方行っちゃったり。これの修行期間が三 年。さっきお見せしたように何種類もありますしね。で、これ一気に折り込まない と、途中息すると力抜けるわけですよね。そうすると微妙にその部分だけが出っ張っ たり、引っ込んだり。均等な力で折っていかないと。今はもう慣れましたからどうっ てこと無いですけど。手元でちょっとずれると、やっぱりこうずれるでしょ? ほ んとはこれ平らに行かなきゃいけないんですよね。手元で一ミリ狂うと最後は五ミリ ぐらい。だから百枚あっても百枚おんなじっていうわけには行かない。しかも型それ ぞれにやっぱり癖があって、それをのみ込んだ上でやんないと。どうしても上の方に 上がって行っちゃう型もあれば、下の方へずれて来ちゃうのもあれば。(型は作り直 す?)しますよそりゃ。

●今その問屋さんもつぶれちゃって
(芸能人との付き合いはある?)以前は伊東屋さんっていうのがあったんですよ。お 店兼問屋さんみたいな形で。で、全てそこへ注文が来ますよね。そこから下請けに来 るんですね、われわれみたいなところに。ですから表立ってこれ誰のっていうのはわ からないですけど、まあそういったのも結構あったと思いますよね。今その問屋さん もつぶれちゃって。景気のいい時に本業でやってればいいんですけど、やっぱりどっ か手を出して、そっちの方で食われちゃった。


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