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![]() ●人気歌舞伎役者 (市松って何?)これは江戸時代に、今でいう芸能人みたいな歌舞伎役者で佐野川市松っていう人気歌舞伎役者がいて、その人が、男なんですけど、ある格子の着物を着ると市松模様と呼ばれたり、それに似せて作ったっていうのが始まりなんです。この人形とその市松模様と関係はあんまり無いんですけど、発祥はおんなじっていうことですよね。(最初の頃は市松をモデルに人形を作った?)そうですね。やはり当時の人気俳優ですから。もともと、このお人形っていうのは着せ替えのできる、昔ながらのおもちゃの感覚なんですよ。 ●四代目なんです (商品の名前は?)松菊(しょうぎく)です。(何代目?)四代目なんです。明治十五年ごろ菊地人形製作所っていう所から発祥してるわけなんですけど。今はだいぶ形態が変わっちゃってるんですけど、浅草橋に人形問屋さんってありますよね? あそこに納める人形を作ってたんです。(下職?)ええ、下職なんですよ。今は直接デパートにうちから入ったり、多少そういう形態はくずれてきているんです。(何歳から人形を作って?)二十歳ぐらいの頃。二十二、三年になりますかね。ま、若い頃から見様見真似でやっぱり手伝ってたりしたんで、正式には二十二、三年ですね。 ![]() ●仕事は半分以上男です (人形は女性のものでも仕事は男性?)仕事は半分以上男です。(顔は?)わたくしがやります、土台からね。生地っていって桐の木のおが屑なんですけど、そういうところから何回も塗って、組み立てまでだいたい男がやるんですよ。(おがくず?)中身はね、塗っちゃうと分かんないですけど。(何で固める?)生麩糊(しょうふのり)です。細かくやると百以上あるんですよ。人形の場合、素材が単品ではないんです。伝統工芸だとほとんど数種類の素材でできたものが多いんですけど、人形の場合は種類が材料、素材ともいっぱいあるんで。(何にも無いところから全部作る?)そうです、ええ。(布は買ってくる?)布は、買うっていっても今はなかなかいい布が無いんですよ。こういった古代布、昔の布なんですけど、これは人形用に刺繍した、この大きさ用の着物っていうのがあるんですけど。(着物もこちらで?)ええ。縫ったり、着せたりするのはだいたい女性なんですよ。 ●若い人にはアンティック調 ![]() (布は買うだけ?)お客さんで、要らなくなった着物、たとえば自分の娘時代の、着れなくなった着物をこわして、人形に作り変えてくれとか、この着物で人形に作ってくれとかね、そういう人もいますし、また何年かたって着せ替えの着物を求められるかたもいます。半分以上は趣味的なものなので、自分で縫うかたもね。時間的に余裕のある人でしたら自分で縫ったほうのがやっぱり、味もあるし。(縫える人は少ないのでは?)まあ、針と糸を持つのが今重労働になってますんで、楽しみでやっていただければ、ええ。(人間のより小さいから早く縫える?)まあ、生地自体がそれほど要りませんので、で、古代布っていうのが今流行ってまして、なかなか手に入れるのも大変なんですけど、そういうのでやるとまた風合いがぜんぜんいいんです。(買う人の年齢は?)やっぱり上から、そして若いかたにも買っていただいてます。逆にね、古代布なんか使って、若い人にはアンティック調っていうか、それがまた新しい雰囲気ですから。(現代の家では目立つ?)そうですね。はいはい人形なんかも、一時代まえはどこの家庭にもあったもんなんですけど、今は逆に珍しいっていうか、ほんとに希少価値になってんですよ。(はいはい人形もお雛様と飾る?)ええ。お子さんが生まれる前とか、生まれてからでもいいんですけど、昔はよく贈ったもんなんですけど、市松も同じ要素があって、それを更に幼少化っていうか子供化されたもんがはいはい人形なんですよ。市松人形は三歳、五歳、七歳って、お姉ちゃんぽい感じなんです。(はいはい人形も着せ替え?)そうです。はだかん坊で小売するんですよ。着物を着せないで、この時点でもうはいはいの姿勢になっちゃってんですよ。だから、ここまで男が作るんです。これに襟とか付けて下ごしらえし、長襦袢を着せて、また着物を着せるわけですけど、それはある程度、人形のかたちに沿って縫ってるわけですよね。(着物の寸法も付けて売る?)寸法書きもありますよ。これ昔からの、何号って決まってて、足袋やなんかもあるし、そういった物もある。 ![]() ●伝統工芸品で指定になっちゃってますんで 今どういう人形が売られてるっかって言うと、やっぱり機械作りの、ドーンとやって、台でネジで留まっていて、着物も貼り付けたようにやって、帯で巻いてっていう感じで、大量生産なんですよ、中身は発泡スチロールで。ですから立ってるものが多いんです。(手も動かない?)うちのは手も動きますよ、袖を通していますから、赤ちゃんとおんなじで。座ったり、立ったりできます。(値段は一桁ちがう?)値段は逆にねえ、高いですよ、他の店でよく売ってるものは。(買う人に知識が無い?)そうですね。ま、おんなじものだと見られちゃう、名前が同じだから。(違う点は?)うちのは着物の丈を腰上げで調節できるんです。大量生産では、帯で隠せるっていうんで、張り合わせるような形にしてありますけど、うちは先祖代々やってますし、伝統工芸品で指定になっちゃってますんで、そういうことはしないで、ぜんぶ一枚の着物になってんです。(指定されるとそれ以外の技術は使えない?)そうです、一点物なんで、大量に作るとか、着物に対しても・・・。 ●作るのに半年から一年 (市松人形は一般的な商品名?)ええ。二十年ぐらい前に大ブームになったんで、そうすると火がついたっていうか、どこの人形屋もやるようになった。それまで火ついてない状態だと、数軒なんですよ、ずーっとそれだけやってるって所は。(市松人形ではお宅が一番古い?)そうです。(ほかに手作りの人は?)あと数軒いますけどね、少ないです。市場には出てないし、うちもそうなんだけど。他の店でいっぱい売ってるっていうのは大量生産で作っちゃってるんで、そういう所が一般的です。(問屋には並べない?)そういう風な流れになっちゃってるんで、逆に大量に注文もらっても困っちゃうし。昔でしたら、それなりに数こなして、いいんですけど。(今もお父さんと一緒に?)ええ。職人も居ますけど、ほとんど自分ちで全部やるようにして、髪の毛もね。髪の毛は髪の毛だけとか、桐の木のおが屑はおが屑だけとか、本来は居るんですよ、分業で、そういうとこに頼めば。でももう、そういうのも自分でやるようにしてんです。けっこう歳がいっちゃってるんでね、どの職人も。(売れちゃうと困るっていうのも困ったもの?)えへへへへ。(在庫は?)ある程度今、すぐくれってことになるんで、本来は問屋さんで抱えるんですけど、うちで抱えるようにしなきゃなんないんで、三十個単位ぐらいの在庫は常に、種類がいっぱいあるんで、抱えるようにしないと間に合わないんでね。やっぱり作るのに半年から一年ぐらいかかっちゃうんですよ、最初っからやってるとね。だから、ある程度作りだめするんです。乾燥させたりするのに時間がかかるんです。 ●四十五センチのが一般的 (着物で値段が違う?)種類によっても違います。あと大きさですね。それと、作ってる所なんで、いろいろ相談に乗ることもできますし、ええ。(売れ筋は?)四十五センチのが一般的なんですけど、どんどん小型化されちゃって。大きいのっていうと子供ぐらいの背丈まであるんですけど、ただ大きいのがほんと需要が無くなっちゃって、注文いただかないと作らない。(博物館で大きいの見たけど?)そういうとこですと大きいものじゃないと。保養所とか、区の施設とか、そういうとこには行ってますけどね。実際に家庭に飾るんですと、あんまり大きいものはいま敬遠されてます。 ●直しは頻繁にあります (直しは?)これ五、六十年経ちますと、やっぱり衣装ですとか、髪の毛ですとか痛んでくるんですよ、色が飛んだり。そうすると髪の毛取り替えてくれとか、衣装着せ替えてくれっていうことになるわけですよ、人形本体はその時代のもので。そういった直しは頻繁にあります。 ●絵柄を選んだり、縫ったりっていうのは、やっぱり女性の仕事 (古代布だと値段が高い?)逆に、新しい布っていうのが、いいのが無くて、安っぽくなっちゃうんで、ほとんど古代布でやってます。ですから、そういった問題もあって、注文が多いと困るっていうのがあるんですよ。(古代布を手に入れるのは難しい?)うちの古い箪笥から、最初は引っ張り出してやってたんですけど、そういのは一回作っちゃえば終わっちゃうんで、骨董品屋さんで布を扱ってる、着物なんですけどね、その着物一着分を買ってきて、ほどいて洗い張りしてから仕立てるわけです。買って来るのはわたしなんですけど、絵柄を選んだり、縫ったりっていうのは、やっぱり女性の仕事になってしまいますんで。(お母さんとか奥さん?)そうです。いま二人だけで。(髪の毛は?)髪の毛も純毛っていうわけなんです、今なかなか手に入らないですけど。で、古代布の中でも紫色のは手に入らないんですよ、やっぱり。(純毛だと値段も上がる?)あんまり変わんないんです、手間だけなんです、材料はこっちのほうが高いんですけど。(菊地さんのお気に入りは?)あそこにある小さいのも、ほんと小さいタイプで、手間はおんなじで、かえって凝るんですけど、作んのに時間だとか関係無くやっちゃうんですけど。(売りたくない?)でもね値段が、小さくなると取れないんですよね。 ●最初に目玉を入れて、それで何回も塗って(顔は型がある?)目玉が入る前の大雑把な形なんですよ。型は松脂(やに)なんで、そこに桐の木のおが屑を詰めていくんですが、数個なんですよ、作れるのが。そこから目玉を入れて、何回も塗って削っていくんで、やっぱり全部、多少表情が違うんです。(こっちが可愛いから欲しいということがある?)ありますね。(お宅の顔の特徴は?)どうしても顔作りが似るんですよ。よく作った人に似てるとか言いますよね。対象物っていうのは、作ってるときにはあんまり気にしてないんですけど、身近に居る人の顔になると思うんですよね。(作りかけを手に?)桐の木のおが屑を型で押して、乾燥させて、これはもう目玉を入れちゃったんですけど、これ自体では顔の表情が想像つかないと思うんですが、そこから顔に近づけていくわけなんです。最初に目玉を入れて、それで何回も塗って、もっとノッペラボウにして、あとから彫っていくわけですから全部おんなじっていうわけにいかないんです。(目を彫り出す?)彫るんです。これも目玉専門の義眼屋っていうのが居るんです。そこが違うんです、西洋人形とかおもちゃの人形と。あっちは裏っ側から貼るようなかたちなんです、型に流し込んで、目のところにこう。本当の日本人形っていうのは外側から入ってる。雛人形もそうなんだけど。(人形造りは手間がかかる?)工程がいっぱいあるんです。ですから、ほんとの最初からやると時間はとてつもなくかかっちゃうんです。 ●海外のほうが評価高いんです(人気俳優の顔を作る?)それはないですね。逆に古臭くつくるっていうか、やっぱり良く作ればそれなりに売れるのが早いですし。(置物のようでおもちゃ?)ですから、ケース入りもありますけど、しょっちゅう触って楽しめるとか、そういった要素もあるんで、ええ。うちみたいなやつは、飽きたら帯と着物をほどいちゃって、それを参考にして縫って、また着せてみるとかね。(遊び方の提案がある?)ま、時間と余裕がないと、なかなかね。主婦が対象なんです。だから、あんまり景気が悪かったりすると、けっこう引き締まっちゃうんですよね。(熱心に集める人も?)部屋がありましてね、専用の、それに入れて相当な数になっちゃいますから。うちのだけでも、小さいものから大きいものまで、いろんな種類持ってるんですよ。そのほかに、よそのも持ってるし、古いのも持ってるし。(値段は?)西洋のアンティークドールでビスクドールってのがあるんですけど、何百万とかするんだけど、日本人形はそんなにしないんです。日本人形はけっこう海外のほうが評価高いんです、無いですからね。外国のマーケットには出ないし、日本にもあんまり無いんですよ。(日本人形のオークションは?)ないんです。いま骨董ブームで、市なんかで、一部で人形を売ってますけどね、安いですよ。で、痛んでるものが多いんです。素材が桐の木のおが屑で、貝の粉と膠(にかわ)を練ったものを何回も塗ってるんですけど、湿気と衝撃に弱いんです。その点、外国の人形ですと拭いても大丈夫だし、日本人形の場合拭けないですから。顔さえ触らなければいいわけなんですが。顔は五、六十年経って、それほどひどくなければ塗りってのは奨めないですけど、どうしてもひび割れとかでかなりきたないようでしたら塗り直すことはできます。 ●一年中出しといて大丈夫です (一年中飾れる?)今は一年中飾っといていいわけですけど、かえってそのほうのが痛まないし。一年中楽しめる人形になってきてます。お節句自体が消極的になってるんで。(お雛様は仕舞わないとお嫁に行けないっていうけど?)市松人形の場合は逆に一年中出しといて大丈夫ですから。珍しいものに加えて、季節感も無くなってきて、一年中売れてますけどね。(夏は夏の着物を着せる?)お客さんによっては浴衣を縫って着せてくれとか。あまり夏の商品ではないんです、暑苦しいですから。 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