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板をプレスで抜いて作る鋏に入れ替わった
うちはだいたい花バサミ
一生もんっていうか、相当使えます
今は東京もお得意さんに入ってますから
無理して使うから
切るテストだけ
ブランド知ってる外人
余分なところはみんな取っちゃってんですよ
愛着持つような道具
今の時代に合わないんだけど
機械を使ったごとく、仕上げんのが腕がいい
板をプレスで抜いて作る鋏に入れ替わった
(何代目?)わたしは二代目なんですよ。(昔、刀鍛冶だった?)うちの親父は刀鍛 冶じゃないけど、戦争中は軍の要請だから、そういうものをやらざるを得ない。親父 は明治三十四年生まれだから、もう結構いい年だったけど、いま生きてれば。親父は 「1901年生まれで、俺は20世紀だ!」っていう風に言っていたけど、あははは。(戦 争中も鋏を作ってた?)親父が独立したのは1919年だから大正何年かな? それから ずっとやってる。ただ、戦争中ちょっと中断したけど、まあ軍事工場になってた間も ちょこちょこっと(笑)。農家のナス切ったり、キュウリ切ったりそういう鋏も必要 だってことで、材料なんかも支給されて、なんとかやったらしいですよ。お花の鋏を 作ると「贅沢品で駄目だ」って、材料も呉れなかったけど、野菜だとかを作る時には 、どうしても生産的に必要な道具だから、材料でもなんでもくれたんですよ。だから 口、言葉一つなんですよ。木鋏って言うと、税金かかんないけど、生け花鋏って言う と、もう贅沢品になっちゃう。で、もう戦後もみんな木鋏で通して(笑)。同じ形で いて、言い方で違ってくるんですよ、不思議なんですけどね。今もうそういうの外れ たから。(昔、植木鋏はどの家にもあった?)そうです。いま鋏は、こういう鋏じゃ なくて、板ものって言って、板をプレスで抜いて作る鋏に入れ替わったから、これか ら若い人が鋏ってああいう形なんだと思うんじゃないかなあって思う。こういう形の は鍛造品って言って、一つの鉄を形付けて作ってるもんだけど、生産量はやっぱりプ レスで抜いた方が早く沢山できるし。だから、そういう鋏に変わってくんじゃないか な? まだ十年、二十年は平気だろうけど、もっと先んなると。

うちはだいたい花バサミ
(花鋏が専門?)うん、そうそうそう。まあうちはだいたい花バサミでね、木を切る のが多いんですよ、盆栽だとか、生け花。それが主で、ほかの握り鋏じゃないけど、 そういうものもやるけど、だいたいは木を切る。枝切ったり、刈り込みとか、植木、 生垣やる鋏、園芸関係。(工程を全部自分で?)だいたいそうですよね。まあ、暑く て今は駄目ですね、あははは。この頃はもう、公害的なこともあって、騒音が。(壁 の写真の建物は?)今の家を作る前に、たまたまそういう風な話じゃないけど、偶然 に、写したいっていう人が出てきたから。(非常に風情がある?)みんなそれの方が いいって言うんですよ(笑)。(いつ頃の写真?)うーんと、平成四年で、ちょうど 壊す二ヶ月前ぐらいです。

一生もんっていうか、相当使えます
(これは?)今までこんなのやんなかったの。言われたから、今度これをメインに出 そうかなって。(何用の鋏?)これは植木鋏。これと同じような物がそこに出てると 思うけど、大きいやつ。それが従来の、うちの普通の植木鋏とか、大久保鋏って言っ てんだけど、私はそれくらい大きくないと手が入んないんだけど、ご婦人だと手が小 さくて、新しいのが丁度いいんです。従来のは、手が小さい人だと力が入んない。今 度、特別注文だったのをひとつ、そういう風なことで流してあげようかなあと思って 。この頃女のかたがよくやんですよ、庭のちょっとしたのを。(ガーデニング?)そ うそうそう。(刃の大きさは?)刃の大きさはおんなじなんですよ。足の位置が、違 う。柄の位置が違ってくる。値段的には、ちょっと高いんですけど。まあ、材料も多 少変えてね。で、千円か千五百円ぐらい違った値段にしようかなあと思ってるんだけ どね。(従来のでいくらぐらい?)これで、一万四千円ぐらい。(小さいのは女性用 ?)女性用っていうことないけど、うちで私がよく言うのはね、道具ってのは手の延 長だから、自分の手に合うものが一等使いやすい道具だと、そういう風に説明すんで すよ。だから、お花の場合でも、手が小さい人は、なるべく寸法の小さいの。それか ら、大きい人は大きいの。そういうので何種類もあるんですよね。そいで選択したほ うがいいでしょう? っていうこと。(子供用の包丁はある?)うんうん、もっと小 さいのね。あと年寄りかなんかでも結構小さいのを、っていうことで、使う人が多く なった。(買うと一生物?)一生もんっていうか、相当使えます。まあ、使い方によ りますね。あそこにある古い鋏はね、私が使ってんじゃなく、お客さんが使ったやつ だけど。四十三年だから。これは、毎日ずっと使ってたもんだから、こんな風に光っ てんですよ。(修理せず?)一度もしないんですよ。(研がない?)そうそう。(切 れ味は?)まあ、切れ味は落ちていきますよね、やっぱり刃物っていうのは。(綴じ 目が緩むことはある?)そりゃ芯も減るし、どうしても。

今は東京もお得意さんに入ってますから
(地域で形が違う?)関西で生け花鋏って言うと、みんなこの蕨(わらび)が付いて る形なんですよ。池坊ってのが先祖みたいなもんだから、向こうで生け花鋏っていう 時はそれ。で、江戸の方で開発されたのが、あの蔓(つる)が付いているやつ。だか ら、池坊だと草月だとか、小原とかいうのはみんな関西の方の形なんですけどね、今 は東京もお得意さんに入ってますからね、うちで作ってるのも半分半分。(関西の生 け花鋏の呼び方は?)いろいろ差し支えあるんでね、普通わたしらが出している時は 、蕨手(わらびて)って言ってるんですよ。そうすれば誰も引っかかんないから。そ れで、片っぽはね、蔓、知ってるでしょ? 植物の、巻いてるやつ。それを蔓手(つ るて)とか言って。

無理して使うから
(これは手の入るところが無い!)それは手を入れなきゃ駄目、それじゃ力が入んな いです。でも、慣れないと手を挟むんです。でも、この頃使うかたが、上手じゃない から、無理して使うから、もう先っぽ・・・昔は鋏をすごく大事に使ったけどね・・ ・ここがね、ここが曲がっちゃうんですよ。なぜかっていうと、生け花で鋸(のこぎ り)を使わなくなったの。花の下に雑巾を置くんですよ。それで、上から体重をかけ るの。それで太いのを切っちゃう。その代わり、上手にやんないと先が曲がっちゃう 。今まで、曲がっちゃったって言うけど、手が痛くなったって誰も言わないんです。 だから、不思議だっていうことで、いろいろ調査したんです。そうしたら、この上に 雑巾を置きまして、体重をかけるんですって。(無茶苦茶な使い方?)それを教える 先生が今いなくなったの。昔はそんなことしないんですよ。無理なものは鋸、鉈(な た)。そういう道具があんですよね、花鋸、花小刀ってあるんだけど、そういうのを 使わないから、鋏一丁で。だから、もっと太く丈夫なの作れって言うんだけど、丈夫 に作ってもやる事は同じだから曲がっちゃう。(それは直せる?)まあ、うちで直し ますけど、その癖の人はまた曲げちゃって、駄目ですよ。

切るテストだけ
(これは盆栽鋏?)それは盆栽。あそこに真っ直ぐしてるのも盆栽なんですよ。(枝 の奥のを切る鋏?)そうそうそう。枝透かしって言うんだけど。それはうちの製品で は早く作った方なんです。(形が違えば値段も違う?)値段も違う。(大小がある? )大小ないけど、形でね、うちでは芽摘みって言ってるやつがあるんですよ。同じ盆 栽鋏でも、芽摘みって言うんです。芽を摘む。(自分でも盆栽する?)うち? 盆栽 はあんまりやらないけど、テストできるぐらいは、あははは。(一応は切ってる?) 一応は切ってるんです。前はけっこう庭があったんだけど、だんだん狭まっちゃった 。もう切るだけですよ、切るテストだけ。

ブランド知ってる外人
ブランド知ってる外人は、けっこう来る人もいるけどね。ブランドで来る時はうちが 対応すんだけど、ただ普通の鋏だったら、だいたい三分の一ぐらいの値段だから・・ ・。もう、これがいいとはわかんないんですよ、説明しても。だいたい三倍か四倍高 いもんでね、日本の市場の中でもね。だから、向こうの人はブランド指定が無いとき は、こういうのがありますよって紹介してあげた方がいい。(値段の違いはどこで? )やっぱり、それは材料と技術だね! 今もう、放電加工機ってあるんですけどね、 形はそっくりです。形が全部おなじ、見かけは全部おなじです。

余分なところはみんな取っちゃってんですよ
よそのうちと比べりゃ、すぐ分かるんだけど。よく取材する人が、なんでこういう風 に軽いのかなって。目方じゃないんです。目方はね、何グラムも変わんないんです。 うちのはもう・・・だいたい軽いっていうのはね、余分なところはみんな取っちゃっ てんですよ。基本的なとこは、見かけ、デザイン的って言うかな。機能は変わんない んだけど、表面の見方も飽きないように。なんて言ったらいいかな? 余分な肉は、 われわれは肉って言うんだけど、そういうのは取っちゃって、基本の肉だけはちゃん と。で、平らのとこは平ら、丸いとこは丸い。丸いのが平らんなってみたり、平らな ものが丸くなったり、それは非常に品物として醜いわけよね。だからそういうところ で、全体的に軽くなってる。(軽くて動きやすい?)そうそう。要するに、そうする と疲れないんですよ。

愛着持つような道具
(初めて買う人鋏の選び方は?)選び方ですか? 初めて買うのは、持った使い勝手 とかは別ですけど、スムーズにこうスッと刃が擦り合って行くとかね、まあそれが第 一条件。それからあと、耐久的な問題があるから、やっぱり良く刃が付いてるのがい い。(いいものを買うこと?)いいものを買っておけば、何十年も使って、またオー バーホールすれば、また使えることだし。それも一つの条件です。これはこの間、東 京都知事賞もらったんです。下が平らなのはね、生け花の時に、水揚げの時につぶす んですよ。みんなお花やるときこうつぶすんですけど、普通のは滑っちゃうから。こ れはまっ平ら。バンバン、バンバンってつぶして水揚げやると、水揚げがいいわけ。 (なるほど!)(笑)そういう説明されると、なるほどと思うけど、デザイナーに言 わせると、下がぶっちぎれちゃうっていうのは、デザイン的に良くないんだって、え へへへ。こう丸くなった方がいいんだってデザイナーは言うんですけど、要するに用 途はそうなんです。でも、なにしろうちの高いから、真似してやるっていう人は無い からね。でも、ずいぶん真似されてんのありますけどね。形なんかも、地方はみんな 独特の形だったのが、今はほとんどみんなおんなじような形になってしまって。だか ら、よっぽど特徴がないと駄目なんです。(店の外に機能美の極致と書いてあるけど 、形は使いやすさから決まる?)まあそうでしょうね。機能美は、機能があって、も ちろん使い方次第だけども、見てても・・・。要するに道具ってのは、飽きちゃった らしょうがないから、やっぱし愛着持つような道具じゃないとうまくない。まず、切 れることが一番ですからね。切れない鋏でいくら格好良くたって駄目だから、まず切 れることでしょう? それから、飽きないような形になっていて、無駄が無いような ものが、道具に一等使える。それの方が大事にしてくれるし、長くもっちゃうんです よ。どうせ一回使ったのは捨てちゃうんだからいいんだ、って思えば、粗末に扱うけ ど、やっぱし何万円もするんだったら、終わってからちゃんと手入れして仕舞って。 もう修理に来ても箱がおんぼろんなっちゃっても、まだ入れている人いますもんね。

今の時代に合わないんだけど
うふふふ (一年に何本ぐらい作る?)あんまり、もう自分一人になっちゃったから。でも、な んだかんだ言ってもやっぱし、千丁以上は作らなくちゃならない。そのぐらい作んな ければ生活できない。でもね、直販的に売れれば価格が高くなって、量が少なくて良 いんだけど、もう親父の代から何十年も長い問屋さんの付き合いがあるから、いまさ ら直販・・・。デパートでやる時はこの頃大目に見てるけど、やっぱしねえ、直販っ てのを表に出してないから。テレビとかそういうのに出た時は注文が来るけど、なる べくその住所も何も出さないでくれっていうことでね。あんまり売るのに積極性が無 いんだけど。結局まあ、うんと余っちゃうと、非常に困るんじゃないかなというとこ ろもあるんで。(刃物の問屋はまだ力がある?)そう、うちのは、しっかりしている とこだから。小っちゃなところなんです。(現金書留の袋を見せながら)この人、俺 は代金要らないって言ったんだけど、今やってんです。お金貰っちゃうと急かされて ね、非常に良くないんですよ、ふっふ。だから、前金はうちは貰わないことになって るんです。できた時点で・・・。(個人の客?)そう個人ですね、九州のほうの人で す。だいぶ前にテレビに出たんだけど、問い合わせて、それで住所聞いて、それで来 たんじゃないかな。テレビであろうが、雑誌であろうが、出てかならず何件か来るん ですよ。そういう自分の扱えるようなのはやるけど。でも、家元には直接売ってない ・・・家元さんとは知ってますよ・・・だけど、そこに問屋さんが入っていますから ね。そこをこう掻き分けて入るほどの量はできるわけじゃないんだから。で、変な気 持ち受けるより、そんなことしない方がきれいでしょう? だから、変な話だけど、 売りを表に出してないから、展示してあるのも値段をいっさい書いてないでしょ?  こういうものをやってんですよって、だけであって。売る姿勢だったら、ぜんぶ値段 付けていきますけどね。なんか今の時代に合わないんだけど、うふふふ。たまにはそ ういう人もいても良いかなと思うぐらいであって。

機械を使ったごとく、仕上げんのが腕がいい
(これはガーゼを切る鋏?)親父が医療器やってたから、こういう名残りがあるんで すよ。むこうのは歯医者が使ってる。(これは爪切り?)はい、爪切りです。これ、 看護婦さんなんかが使ってる、医療関係の。親父はもう医療をずいぶんやってたの。 だから、そういう関係でね、うちの仕上げはきれいっていうかな、そういうとこある らしい。だから昔は、機械を使ったごとく、仕上げんのが腕がいいと。今はそうやる と、機械作りだろうって言われちゃう(笑)。ガリガリにしたほうが手作りに見える んだって。おかしい話! 私は、機械でやったぐらいにきれいに見えるのが、腕がい い職人だと思う。今はね、わざわざヤスリ目を付けて、手でやったってのを見せつけ てる。

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