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もう九十年です、今年で
桐は一番湿気に強い
今はほとんどどこの家でも家族だけ
やっぱり昔のまんまじゃ売れないですよね
いいものを作ればお客さんが来る
仕事場はみんなどこでも狭いんだ
いい品物ほど幅の広い板を使うんです
ええ、絶対得(とく)ですよ! 絶対!
百パーセント国産
毛皮ってつけたら高級に聞こえる
ひと月二本ぐらいです
忙しくても大して儲かる商売じゃない
百年以上の老舗がつぶれちゃった
買い替えっていうより追加ですね
鼠に齧られちゃったりとか(笑)ひどいのも来ます
まだ小さい、中学生
縦っつうのはくっつけられない

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●もう九十年です、今年で

(桐でも灰色がかってる?)これは、火で焼いたやつなんです、仕上げがね。普通 は、黄色いのがあるんですけど、これは途中で火で焼く工程が入ってるんです。焼く と目の柔らかいところがへっこんで、色を塗るってよりも色を中に入れていくんです けど、ふき取りながら色をつけていくんです。だから難しいんです、結構ね、むらに なっちゃって。(時代仕上?)一応名前はね、そういう。今はもうすごく、けっこう 出ますけどね。だから歴史は、うちらがいっとう最初にやったの、桐箪笥ではね。昔 はお琴とか、ああいうのはほかにあんだけど、桐箪笥ではなかったわけよ。まあ三十 五年前ぐらいですかね、今はもうかなり普通のスタンダードになったんですけど、そ んなに歴史は浅いんですよ。(この時代仕上はお父さんの代からあった?)おじいさ んの代からで、うちは。たぶん、百年近くやって、もう九十年です、今年で。

●桐は一番湿気に強い

(雨の日は湿気はいけない?)いけないって言うか、桐は一番湿気に強いんですけ ど、やっぱり無い方が、人間にも過度の湿気は、多少の湿気はあったほうが良いんで すけど、湿気ってのは一番良くないね。食べ物の食中毒じゃないけど、呉服だと湿気 るとね、虫がつきやすいし、虫が生き生きする時期で、あんまり良くない。(笑)バ ックやなんかでも、ちょっと変なところに置いておくと、みんな汚れからカビがも う、ヴィトンでも何でも手入れが駄目だと、ぽちぽち白くなっちゃいますよね。で も、桐に入れておくと大丈夫なんですよ、カビとか。

●今はほとんどどこの家でも家族だけ

(今は一人?)ええ、そうです。もうおやじが亡くなって何年だろう、四年くらいで すか。(お父さんに仕事を教わった?)そうですね。まあ一時はね、三人でやった時 期もあるけども、おじいさんがわりと長生きして、おやじが早く逝っちゃったから、 俺が始めた頃はまだおじいさんもやっててね、五年ぐらいはおじいさんとおやじと俺 の3人でやっていたんですよね。昔はみんなもう十人とかね、戦前はすごい、みんな 人が居たけど、今はほとんどどこの家でも家族だけで。だから、厳しいんですよ、こ ういう仕事は一人になっちゃうと、配達とか。(一人じゃ持てない?)そうなんです よ、ええ。(作るのは一人でも?)だから、普通なら順調に行けばね、人使わなくて も、オヤジがまだ七十くらいで生きていればね、やっててそのうち今度は子供が大き くなってっていうあれで何とかね、手変えられるんだけど。(職人で片山さん若いほ う?)そうですね、あとは息子さん、親子でやってるとこが、けっこう今はね。だか ら、親方としてはまだ全然若い方ですよね。(箪笥作り始めて何年?)ええと、高校 を卒業してだから三十年くらいですかね。四十八だから、今年で誕生日来て三十年で すね。(大きな箪笥が専門?)そうですね、まずね。(片山桐箪笥の屋号は九十年間 続いて?)そうですね。

●やっぱり昔のまんまじゃ売れないですよね

ありますから、そういうのが一番多いですけど、ただ、こういうのを中心に作ってる ってことはないですね。(代ごとに変る?)デザインっていうのはみんな変わってい っちゃいますから、時代時代でねえ、ええ。だから、基本的には変わってないですけ どねそんなに。箪笥の場合だとどうしても、収納っつうのが第一の目的だから、デザ インはその後だからね、そんなに極端には変わんないですけど、やっぱし年々良くは なっていますね。世の中の生活水準が良くなっていますからね、やっぱり昔のまんま じゃ売れないですよね。(寸法はだいたい決まってる?)規格としてはね、全国的に 一応こう、その間(あいだ)間にいくらでもあるんですけど、尺で昔から、間口から だいだいいろんな形っつうか、規格が決まるんですよ。高さよりも、これ間口なんで す、三尺一寸で九十四センチですね。だいたい九十四センチ、百センチ、百六セン チ、百二十一センチっつう、それから高さがだいたい出て、規格に合わして、あと奥 行きっつうのもだいたい基準ですか、これがね。あとは、多少その店によって、規格 よりも手作りだからっていうんで、量産だとみんな規格に合わせて作りますけど、う ちあたりはその分、じゃ高さを少し普通の規格よりも、たとえば間口が百六センチだ ったら百七十だけど、百七十五にしたりとか、もっといいもんになるとと百七十七セ ンチにしたりとか、そういうことはお店、お店で多少ね。あと、奥行きも深くすると か。だいたいまあ一般にこれが一番良く出るっつうか、まあ百六センチが出るんです けどね、これは昔のサイズなんですよ。(少し前に収めたのは大きかった?)ええ大 きいですね、これは厚みが一寸という、すごい厚い、こういう厚い材料のこういうの を作んですよ。この厚みをそのままムクで使って。だから重さはめっちゃくちゃ重 い、大きさも大きいですよね。高さも洋家具並みで百八十。間口は三尺六寸ってまあ 約百十センチの間口なんですけどね。それで高さが百八十一センチで、奥行きが四十 八センチぐらいですか。(どういうところに納める?)デパートを通じて一本買って 頂いて、それから四、五年経ってから今度は、名刺が行ってますんで、直接今度はあ と二本それに合わして作りたいっていうんで、三本セットにしたいっつうんで、だか ら元はデパートさんで売ったんだけど、その後はこっちへね。それはもうデパートさ んで「別にいいよ、あとから来る分には」って、名刺も配っていいことになってます んで。使って良いからもう二本欲しいってことで。(個人の注文?)ええ、個人で す。

●いいものを作ればお客さんが来る

(片山さんの特徴は?)特徴っつうか、まあ、頼まれれば何でも作るってことなんで しょうけどね、細かいところに有りますけどね、いろいろ。隠しを二重に、普通は一 個へそくり入れの隠しがあって、そん中にまた隠しを作るとか、いいものになると、 そういうものはありますけど(笑)なかなか普通には難しい。何でも、けっこう東京 の人は作れないような、新潟あたりの少し変わったやつでも、それを手作りにしたり とか。だからみんなが作れないものでも作れます。ただ、ここの商品でこれ特徴っつ うのはなかなかね。(おじいさんの頃と感じが違う?)そうですね、感じがもうやっ ぱし、昔もあったですけど、贅沢になっていますよね。金物にしても全然違うし、種 類がどんどん、今言ったように生活水準がやっぱり箪笥業界だけじゃなくて、全ての 生活水準が違うから。(金物は彫金屋で?)じゃなくて、専門の卸屋さんがあるんで すよ、桐箪笥専門のね。そっからみんな買うんですけどね。(昔はどのうちにも箪笥 があった?)そう、桐箪笥しか無かったから昔は、だから良いも悪いも極端ですよ ね、もういろんな。(金物だって?)だいたい決まってましたよね。だから、ここ十 年ちょっとですよ、これだけ普及してきたのは、金物が。で、結局金物屋さんも力入 れて、お金取るにはやっぱし、あとからどんどんいいもの作っていかないと、そのも の自体を値上げしていけないから、いいものを作ればお客さんが来る、それで値段を 上げていくっつう感じで。

●仕事場はみんなどこでも狭いんだ

仕事場はみんなどこでも狭いんだ、東京の場合はね。(もっと小さい所も?)もっと いくらでもありますよ、この半分も無い所でやってる所が。指物屋さんもそうだし ね。みんなもう、車持たないで、指物屋さんなんてね。(ここの間口は?)三間半く らいですかね。

●いい品物ほど幅の広い板を使うんです

(あれも桐?)これは全部桐ですね。(太い桐は無いって聞くけど?)あることはあ りますけどね。だから、これだって大きい方なんですよ、桐としてはね、もっと広い のもありますけど、基本的にはあんまり大きくならないですよね。(箪笥は大きい板 が必要?)ええ、そうですね。で、いい品物ほど幅の広い板を使うんです。安いやつ は狭いやつを何枚も接(は)いで、こうつないでいくわけですよ。だから幅が広いほ ど値段も違って、高くなってくるわけですよ、あと厚みもちょっと変ってきますけ ど。この板は、普通は箪笥作ってもいいんだけど、こういうのが主流になってきて ね、中国材なんですけどね。(何に使う?)まな板に使うんで、箪笥には、うちは使 ってないんです。結構デパートだとまな板が出るんですよ、桐のだと、軽くて、乾燥 が早いんで。(高級の箪笥屋さんがまな板?)こういうんじゃ勿体ないから、しかも 板をつないだあるやつをデパート用にね。(お米の糊でつなぐ?)お米じゃないで す、これはボンドです。昔は続飯(そくい)って言ってね、お米をつぶして使ったん ですけど、あれはもう接着力弱いし、虫が食うんですよ、ご飯ですからね。(箪笥は ボンドで接着する?)ええもちろんします。たとえばこんな大きい木、無いですから ね。こうやって幅を寄せていくんです。どんな一千万出そうが、二千万出そうが、箪 笥はみんなもう。(そういうときはボンド?)ボンドですね。(組むこと自体に も?)もちろん使います、接着、全部使います。そうじゃないと弱いですからね、付 けないとね。だから、釘でも(保)ってるんじゃなく、みんな接着剤でもってるんで す、だいたい。(釘も使う?)ええ、木の釘ね。打っちゃって金釘だと、そのあと削 れないですものね。木だったらあとで、打ったあと削れるでしょ、鉋(かんな)で ね。(引出しが多いのは嫌だっていう職人も?)まあ、それは確かに、手間がかかる から、(笑)大きければ、その分手間と材料がかかれば、多少値段が高くなるわけで すよね。だから、商売的には多い方がいいわけですよ、それだけ貰えるわけだから、 お客さんも納得してね。だから、いいものほど引出しの数が増えるんですよ、ええ。 使う人のメリットっていうのは、やっぱし出し入れが楽でしょ? 多い方が。たとえ ば少なければそだけ詰め込むから、下から出すときも、あと折り目がつくとか、大き いのはそれだけ収納がそんなにね、出し入れも楽ですし、折り目はつかないっていう んで、作るのはその分手間も材料もかかりますからね、ただ、その分値段をもらえば いいわけですから。

●ええ、絶対得(とく)ですよ! 絶対!

(箪笥の値段の見所は?)まずは基本的には間口なんです、寸法。値段ってのは寸法 から出るんです。ていうのは、間口が大きくなればその分板も厚くなるんです、基本 的にはね、特徴は別ですけど。間口が広くなればなるほど値段も高くなって、あとサ イズが大きくなるだけじゃなくて、それに合わして、こんど材質っつうか、目のきれ いなやつ使うとか、全体にレベルアップするわけです。だから、普通はもう、あとは 中の盆、普通入ってるんですけども、扉の中に、その枚数が、普通同じデザインでも 六枚だとか、七枚とか、八枚とかあるんですよ。だから盆が良くなってくれば七枚と か八枚とか増えるわけですね、そうすっとやっぱし今言った通りに、お盆がただ五枚 だったら、一番入るけど、結局こう積み重ねたり、出し入れが今度ね。まずはもう間 口です、基本的には。あとは二つ重ねとか、三つ重ねって高さがありますけどね。 (機械で作る店も?)ありますね。それはほとんど、九十パーセントはもうあれじゃ ないですか、機械ですよね。だから、女工さんが作るんですよみんな。分業だから流 れ作業で、で要所要所を職人さんが、組み立てとかそういう。そいじゃないと安くで きない。製造屋さんは直接売るわけじゃないですから、問屋さん入れたりね、そうす るとどうしても値段叩かれますから。全部一から十まで職人さん使ったんじゃ手間が かかっちゃうし。たとえば女工さんと機械だったら、覚えさせればね。で、分業な ら、それだけ覚えさせればいい訳ですから、ええ。(値段は違う?)同なじですよ、 ほとんど、うちあたりで作ってる値段と。流通が間に入っちゃいますからね。(使う と違いが分かる?)ええ、ぜんぜん違いますよ、やっぱり。材質が違いますからも う、中のね。表はパッと見たんじゃ分かんないですけどね。ただ中身やなんかはみん な違います。やっぱりあっちは手考えてね、見栄えを中心に良くしないと。(箪笥は 職人から買うほうが?)ええ、絶対得(とく)ですよ! 絶対!

●百パーセント国産

(箪笥一棹(さお)は同じ木で作る?)まあ、だいたい同んなじ木っていったら、あ の表面なんかは全部おんなじね。で、周りの値段にもよります。やっぱり本当にいい 品物(しなもん)だと、表面と真横ってのは同んなじ木には絶対ならない、表面は柾 板(まさいた)ってのを使うんで、だから木質はみんないい、福島県の会津桐っつう のを使うんですけど、これも値段がいいやつほど全てに、ほかの木を混ぜないで使う わけですよ。(桐材はある?)ええ、ありますよ、輸入材が九割超えちゃってます ね、たぶんね。十年前ぐらいでもう九割ぐらい。(輸入材を使う?)は、使ってない です、まるっきりね。いま言った通り、それは輸入材だけど、それはまな板とか。箪 笥には関係ないんだよね。だからもう百パーセント国産なんですね、ええ。(国産は 入手が大変?)まあ、大変って、表面に使う柾板っていうのはなかなかね、難しいん ですけどね、そん時そん時で。安いのを作るには別にそんなに気を使うようなことは 無くて、いい物にはやっぱし少しでももう、いいものを作りたいっつうあれがあるん でね、やっぱり看板ですから、表面は。それは、そん時そん時で、ちょっと大変だな ってのありますけど、そんなには。(材料の在庫は?)いや、狭いんでね。昔はすご い買ってたんだけど、今は独りですし、あとは多少屋上に置いてあんですけど、昔は ね、今考えると、あんまりあっても焼けちゃうんでね、置いといてもね。(焼け る?)ええ、色がやっぱし、蛍光灯やなんか当たってもね。そりゃ一年そこらはあれ じゃないけど、やっぱし二年や三年も置けば木もね、良くなることは無いんでね。 で、こういう作ってるんでもそうですよ、あんまり作ってからね、長く置いとけばや っぱり日に焼けますからね。材料は今、世の中不景気ですからね、金さえあればいく らでも有りますよね。もう品物がバンバン出ちゃって、まあ輸入材がいくらでも入っ て来るんですよね、輸入材が無かったら、国産品だけだったら、難しいんだろうけ ど。(国産はいい?)ええ、全然いいですよ、やっぱりね。国産ってもね、会津じゃ ないとだめですよね。南部っていうか岩手県とか、ほかいろいろあるんで、栃木、群 馬、秋田とか、そういうところも、けっこう来ますけど、落ちますよね。

●毛皮ってつけたら高級に聞こえる

(毛皮用の箪笥って書いてあるのは?)高級に見えるのね、毛皮ってつけると。それ は好みの問題で、品物はみんな一緒なんだよね。毛皮って書いたから毛皮になんかあ るのかって、別にないんですけど、ただ毛皮ってつけたら高級に聞こえる。(笑)

●ひと月二本ぐらいです

(一棹作る日数は?)それよく聞かれるんですけどね、ひと月二本ぐらいですかね。 それはもう専門で作ってですね。だから実際に二本作れるかっていうと、作れないで すよね、けっきょく集中してやって二本ですもんね、デパートの催事とか、ほかのこ とやってっから、今はとっても二本出来ないですよ。

●忙しくても大して儲かる商売じゃない

(これは高級品?)これはやっぱしねえ、福島県の会津桐の百パーセントなんです よ。基本的には百パーセント使ってる品物って無いですよ、既成の場合は、注文じゃ ないと。ただそれが注文無しでうちの場合作っちゃってっから。だからよく値段、こ れ高いって言われると、難しいんですけどね。ただ、うちあたりは安くて、しょっち ゅうあれしてるわけじゃないし、つけちゃってっけどね。まあ、注文されて、いくら ぐらいっていう感じなんですよ、ほんとはね。(注文でいくら?)うちあたりは・・ ・やっぱ遠い所だと多少出してもらわないと・・・そうですね・・・六十万ぐらいで すかね。(そんなに安い?)ええそうですよ、平均して安くなってますからね。まだ 百万超えるのは少ないですよ、今。そんな高いもんじゃ。安くたって三十万ぐらいで すかね。(それでひと月二本じゃ大変?)大変な商売ですよ、だから。忙しくても大 して儲かる商売じゃないですよ、ええ。だから、自分で作って売ってるだけじゃ、正 直言って食えないです。ほかの人の下請けも出して、それも売らないと、正直言いま すけどね。デパートの催事じゃ、結局動いてて作れないわけですよ。そいで自分ち帰 って作って、それだけ売ってたんじゃ食べられないんです。ある程度下に、要するに 単価の安いものを作らすわけです、手間のいいもの、いい仕事もらった時は自分で作 って、そうしないと。全部いい仕事だけだったら、自分だけで食べていけますけど、 いま世の中がこう低迷してますから。値段が半分だから手間も半分かっていうと、そ うじゃないですよね、ええ。桐箪笥に限らず木工業っていうのは、だいたい良く無い と思います。とくに悪いでしょう、桐箪笥はもう十年以上値段上がってないですか ら。

●百年以上の老舗がつぶれちゃった

(この辺は箪笥屋が多い?)箪笥屋っていうか、木工が多いですね。だいたい板の削 り屋だとか、あと鉋(かんな)の台作ってるとことか、家具屋さんも多かったけど 今、バタバタみんな百億近い負債、倒産がね、百年以上の老舗がつぶれちゃったし。

●買い替えっていうより追加ですね

(今でも箪笥は嫁入り道具?)じゃないですね。今、嫁入りんちへ持っていきますけ ど、逆に五十代ぐらいですかね、いちばん多いですね。結局、娘さんお嫁に出したと か、一応生活が安定したけれど、やっぱり自分があんまりいいもの持ってなかったか らとか、着物がもうある程度増えてきて、一杯になってきて、買い替えっていうより 追加ですね、もう一本欲しいっつう、奥さんなんですけどね。昔はもう八割、九割が 嫁入り道具っつう、あれだったんだけどね、今はもう半々ぐらいじゃないですか。

●鼠に齧られちゃったりとか(笑)ひどいのも来ます

(更正承りますって書いてあるのは修理?)削り直しですね、完全にね、新品同様に するわけですね。(手間かかる?)かかりますね。新しいのを作るほどではないです けどね、傷み具合によってね、だいぶ違いますけどね。傷の深さとか、なかには鼠に 齧られちゃったりとか(笑)ひどいのも来ますからね。もう捨てちゃった方がいいよ っていうのも結構ね。で割とね、そういうの持って来る人は形見が多いんですよ。い くらかかってもいいから・・・。なかなか無いんですって、母親の形見って、と、桐 箪笥だとお母さんが使ったやつだから、まそういう愛着がありますからね、使ったも の、何か残したいっつうんで、そういう人も結構いますよ。親が亡くなって、けっき ょくお嫁さんが貰うっていうよりも、嫁に行った実子の娘さんがそれを引き取るって 感じで。だから取りに行って、直して、こんどは娘さんのとこ持ってったりとかしま すよ。あと、家建て直して、こんど家がきれいんなっちゃうと箪笥だけ目立っちゃう から、で直したいって人も居るし。(削ると新品同様?)そうですね、まその品物に もよるんですけどね、かなりきれいにはなります。(やっぱり古いものはいい?)い や、無いですよね、悪いですよ、逆に。みんなどういう訳か、古いものはいいとね、 こう頭の中にインプットされちゃってるんですから。古きゃあね、やっぱり生活用品 で美術品じゃないですから、今の物のほうのが、もちろん昔でもいい物はありますよ ね、その時代時代で、やっぱり値段によってね。今の物のほうのが、全体的には全然 いいですよ、ええ。昔の材料、今買って無いわけじゃないですしね。接着剤は今のほ うがいいし、昔はご飯粒でくっつけてたんですから。だから、昔があれだっていうの は職人が機械も何も、切るのも全部手で切ったわけですよ、穴明けんのも手でこうや って錐で揉んで、だからそういう面で、品物どうのこうのじゃなくて、大変だったな あっつう、すべて手でやって、それなりに数を上げたっつうのも。だから仕事も逆に 言えば雑ですよ昔のは、数を上げなきゃいけないから、ええ。だから正直言って、片 面削って、見えないとこは片面字があるの、どこどこの何地方、字が入ったのを平気 で、買う方も平気だったんですね。こんなでっかい傷が有っても平気だし、割と値段 で買っちゃって、結局生活用品っていうと桐箪笥しか無かったんですから。昔は総桐 っていうのは半分ぐらいで、みんなほかの木使ってたけど中は見えないですからね。 だからね、全然今の物のほうがいいですよ。昔の職人さんはすべて手でやったわけで すよね、機械が、動力が無かったから、電気がね。そういう意味では大変だったろう と思いますけど。ま、もちろん昔でもいい物はありますけど、職人によってきれいな 仕事やるとか、雑な仕事やるとかね、で大名に頼まれたなんて時は、やっぱりきっち りね。ま、それもあるしね、やっぱし職人さんて、じっくり作れって言っても、いい 物やってないと出来ないんですよ、それは。いくら日にちあげてもやっぱり腕だか ら、きれに早く上げるんが理想ですからね。商売ですからね、趣味だったらじっくり いい物作ればいいけど。だから、日にち有ったからって、いい物が出来るかっていう と、そうでもないし。やっぱりその人の持って生まれたセンスですかね、つまりは ね。箪笥でもみんなそうでしょう? 家具にしても何にしても、最終的にはそれぞ れ、ある程度カバーできるけど、ほんとにいい物作れって言われりゃやっぱし、素質 も無いと。

●まだ小さい、中学生

(修理が来ておじいちゃんの作品が分かる?)だいたい分かりますけどね、ええ。 (どこかに名前は?)入ってないですね、うちあたりはね。(四代目は?)まだ小さ い、中学生ですね。わかんないですね、正直ね、そりゃやってくれればいいなとは思 いますけど、なかなか難しいですよね。

●縦っつうのはくっつけられない

(引き出しの数と値段は関係ある?)たとえばこれでお客さんが、もしももう一段、 四杯にしてくれますかって言えば、多少高くなりますね。(洋服箪笥は?)知らない 人は、洋服箪笥は中がね、ガランだから安いだろうと思う人いるんですよ。ところが ね、洋服箪笥っていうのはもう両面無傷で、高価(たか)い、大きい木なんですよ、 長さが。誤魔化しがきかないんですよ、もう途中傷があってもそっから落としちゃう とか、正面の柾も真っすぐでこいだけの材料ってのは・・・。そういうあれもあるん ですよ。縦っつうのはくっつけられないんですよ、縦は接(は)げないんです、縦は ほんとの一枚じゃないとね。持ってって洋服かけちゃえば見えなくなっちゃってっけ ど、持ってったときが見えるわけですからね。幅っていうのがね、今言ったようにい くらでも接げるんですけど、縦は接げないんですよ。短かければ途中傷があっても計 算して落とせるし、材料も割高のを使うわけですよ、けっきょく一番最高の材料を、 洋服箪笥作るには。(洋服箪笥の歴史は?)そうね、明治は無かったと思いますね。 歴史は浅いよね、洋服箪笥の場合はね。昔は着物ですものね。だいたい開き物は少な かったですよ、昔はね。


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