edocraft-header

屋号と歴史
修業
銅壷(どうこ)の変遷
戦後
売れ筋
材料
作る手順
道具
手作り
銅器の良さ
客の数と年齢
汚れたら
生涯現役
親子の仕事
English interview
Back to product page
 
●屋号と歴史
(父)屋号は銅銀銅器店と申します。こういう名前なのでお間違えに なるかたもいらっしゃいますが、銅器店です。創業は大正七年で、父の代です。(き っかけは?)昔のことですから、父は小僧に行ったわけです。銅器の「落とし」って いう商売があるんですけども、これは火鉢の中に入れる、丸とか四角の品物なんです が、そういうのが専門だったところに奉公に行ったんです。それで親方の跡をついで この商売をやったわけです。銅壷(どうこ)屋の銀次郎(字不明)って名前でした。 昔は銅壷屋の銀ちゃんとか、鍛冶屋の平ちゃんとか、ブリキ屋の徳さんとかって、そ ういう言い方したんで、名前は星野ですけど、星野だけじゃわかんないから、じゃあ 銅銀って名前にしようっていうことで、銅銀とつけたんですね。だけど、銅銀だけじ ゃ何だかわかんないから、けっきょく銅銀銅器店にしたんです。

●修業
(父)子どもの頃から父といっしょに。仕事はしませんでしたけどね。いち おう見て、チョロチョロ遊んでいたんでしょうね。私は昭和二十年、空襲後を仕事の とっかかりの目処(めど)にしているんです。当時学校に行ってましたんで空襲で焼 けちゃって、家(うち)がねえのに学校でもないっていうんで、いろいろとうちの仕事を手伝っていたんですよ。そのままずっとおやじと一緒にやるようになったんです 。学校は出たんじゃなくて、追んだされたほうだね。


●銅壷(どうこ)の変遷
(父)銅器はすごく昔からあったらしいですね。ちょんま げ時代からね。昔の竃(へっつい)、つまりかまどは、たいがい二つあるんですよ。 その真ん中へ水の入るものを置いてお湯を沸かすっていうか、余熱で沸くんです。そ れを銅壷っていったらしいんですね。銅は熱の電導率が高いってことですね。明治に なりまして、竃ってものがだんだん少なくなってきたんでしょう。で、それと同じよ うな意味合いで、炭を使ってお湯を沸かす道具がだんだん増えて、一般的になってき たんじゃないかと思いますね。その名残りと申しますか、大きな小判形の、薪(まき )あるいは炭で火を起こしてお湯を沸かし、その火で調理もできるというのが流行っ たらしいですね。戦前はそういうのがお寿司屋さんの玄関に、店の看板みたいに置い てあって、上に江戸薬罐(やかん)っていう大きな薬罐が乗っかっていたもんです。 今はぜんぜんありませんけど、終戦後はやりましたよ、ご注文で。それから家庭用の 、火鉢の中に入れる道具として銅壷が入ってきたんですが、ようするに暖房機で冬場 だけの仕事ですから、ふつう九月っころから三月ごろになると、その間は忙しいです が、あとはひまになりますわね。ひまになると、昔は遊んでいる人もいたらしんだけ ど、うちの父は遊んでいませんでした。じゃあ夏場に銅壷とか薬罐を作っておこうっていうんで、寒くなるまではずーっと銅壷ばかり作ってました。その銅壷を店に並べて売りたいっていうのが念願だったらしく、実現したのが昭和七年でした。ちょうど 今の店の角(かど)のところ、下駄屋さんだったあとを買ったわけです。それが二十 七の時だったっていうから、ずいぶん昔の人は努力したんだなあって思いますね。溜 まってる品物をウィンドウに並べて、そりゃすごく嬉しかったっていう話は聞いてお ります。もう飛ぶように売れたって言ってました。昭和七年だから戦争景気だったんでしょう。翌年その隣りを買ったっていうんです。二十七で立派だと思います。

●戦後
(父)最初のうちは暖房機で火鉢落としがずいぶん出(売れ)ましたねえ。 ほんとにご注文の仕方だって、数は無制限なんて。こっちは手で作るんだから制限ありますからね。それでも毎日五十本づつ、きちっきちっと作ってお納めしました。そ の時は弟もいましたし、若い衆もいたんです。総勢四人ぐらいです。(意外に沢山で きる?)落としっていうのは簡単なんですよ。当時は丸でしたけど、手あぶり、ご存知でいらっしゃいましょうかね、ついこないだまではちょっとした料亭やなんかで、 ひとりにひとつづつ、周りは曲げ物と申しまして、蒸篭(せいろ)みたいに曲げたもんで、漆が塗ってあるのが置かれていたんです。最初のころは四百五十円でした。上がって五百円が昭和三十七、八年まで続きましたね。そのうちに、外観は同じで電気 (電熱器)が中に入っているのが出てきましたが、感じが出ないのであんまり売れませんでした。今は火鉢落としはほとんど出ません。食事の残りとかおかずとかを入れておく細かい網の蠅帳(はえちょう)も、実用新案とりまして、けっこう出たんです けど、やっぱり嫌んなっちゃってね。なんだつまんねえ、こんな蠅帳なんかいつまでやったってしょうがねえやって、やめちゃったんですよね。だからお得意さんにおこ られちゃった。

●売れ筋
(父)家庭用あるいは営業用の鍋とか、ケトル(薬罐)類とか、そういう ものを年中作ってますよ。急須なんかもこのごろよく出ますね。だいたいこの金属商品ていうのは冬場商品ですから、火がなつかしくなる季節んなるとそれぞれ売れてく るんですよ。

●材料
(父)ほとんど銅と真鍮です。

●作る手順
(父)たとえば急須の口を作るとき、平らなうちに型(かた)で抜き、 焼きます。焼くと真っ黒けになって、第二酸化銅が表面に付着するんで、これを硫酸 で洗うときれいになる。つぎに型で押して筒にし、すき間を蝋づけして、もう一回焼いて、また洗う。焼くと蝋が真鍮になってすき間がくっついちゃうわけ。なぜ焼くか というと、加工するたんびに金属は硬くなるんですよ。焼くと柔らかくなる。それから先がなかなかできないんだな、手でやるからね。叩いて形を整えてから、あとは打つだけ。(ぜんぶ仕事場で?)ええ、熱を加えて焼いたり、洗ったりするのも全部こ こでやります。(子)いま作っているのはシチューパンです。叩いて槌目(つちめ) をつけます。いま柔らかい状態ですから金づちです。叩くと硬くなってしっかりする 。金づちを手入れしておかないと鍋がギザギザになっちゃうんです。


●道具
(子)作るものによって違う道具は、ぜんぶ自分で作ります。それが大変です。だから、もうちょっと小っちゃいのとか言われても、道具から作んなくちゃなんないから、なかなか出来ないんですよ。素材に合った道具をそれぞれ作るわけです。 道具は何十年も使えます。もちろんちゃんと作りますから。(初代からの道具も?) ありますよ。(父)昔のものは材質が良かったんでしょうね。鋼(はがね)と生(な ま)の鉄があるでしょう? 生は柔らかいんだよね。ひじょうに展性に優れている素材。ところが今は生が無いんです。生は昔の鎹(かすがい)。木を止めるご存知の道具ですが、お寺さんほかの大きな建物に使われているのは、ふつうみんな捨てちゃうもんなんだけど、そういうのあったら欲しい、買いたいなんて人もいますよ、鋼屋さ んでね。それと鋼とくっつけて刃を作る。生はお値段がすごく安いんですよ。で、目方は重いんだよね、鋼よりもね。だから生専門に扱っている家(うち)がだんだんなくなっちゃうのね。あ、ねずみ!よそから入ってくるんだよね。

●手作り
(父)まず形がいい。それから丈夫なこととか、使いいい。そういったこ とが三原則だと思います。だいたい今の世の中はちゃんとしたものが少ないですよね 。値段のわりにちゃんとしたものが。手で作ったからって、そう馬鹿ばかしく高いものは本物じゃないと思うんですよ。適正なお値段が必要だと思います。銅器はどれを とってみても三十年ぐらいもちます。話題のロボットの犬なんか買ってどうするんだ ろうね。そりゃたしかに珍しいかもしれませんよ。ま、二万円かそんなもんなら買っ てもいいけど、二十五万円だして何のいいことがあんのかなって思いますけどね。

●銅器の良さ
(父)まず耐久性がありますよね。これはほんとに、いやってほども ちます。落っことしても壊れないし、直そうと思えばいつでも直りますし。どんなに 壊れていても直らないものはありません。これはもう直すより新しいのをお買いになったほうがいいかと思いますっていうようなご返事をする場合もありますが、そういう品物はもう五、六十年たっています。減らないんです。ただ、半分から下の部分が 凹んでも直るんですが、半分から上の部分が疵(きず)をつけるとなかなか直んないんだね。あと、殺菌性があるとか言われているけど、目に見えないものだからね。ほ かの金属にくらべると肌合いがいいですね。

●客の数と年齢
(父)使うかたが多いです。年齢は中年より上のかたがお買いにな りますね。最近はお若いかたも母の日にあげるだとか、結婚式の引き物に卵焼き(器 )出したいとかあります。

●汚れたら
(父)何で磨いてもいいんですよ。たとえばお鍋みたいなものでしたら 、砂をつけてもよし、磨き砂をつけてもよし、それから真鍮磨き、銅磨き、銀磨きで 磨いてもかまわないです。中はあまり掃除しないほうがいいんです。あとは、ときど き濡れ布巾で外っ側を拭いていただくという程度ですね。

●生涯現役
(父)七十過ぎるとくたびれるね。でも、うちに居るときは毎日仕事や ります。やってれば生涯現役と申しますか、よく老後なんて言葉があるけど、おれ老後なんかねえと思うんだよ。やっぱり生きてるうちは、それぞれ一所懸命やらなきゃね。だから私は新青年っていう言葉がいいなと思ってるんだよね。あんまりいい世の 中じゃないね。あらゆることに気をつかってしなきゃなんないし、景気もわるいし。
●親子の仕事
(子)(お父さんと違う商品を作る?)最近、書道で使う墨池(ぼくち)っていう、墨を入れておくものがあるんですよ。そういうのはちょっと独特な商 品です。墨を腐らせないんです。大きいのを書くかたはそこに保存しておくわけです ね。陶器でもあるんですけど、銅だと腐敗を防げるわけですね。殺菌作用で。(分業?)ぜんぶ自分で気に入ったようにやらないと出来ないんです。サイズが、ここが何ミリっていうふうに決っているもんじゃないでしょう? 真ん丸に作ってくれとか、真四角に作ってくれっていうもんなら旋盤なり機械で出来ますけどね。独特なアンギ ュレーションが必要だから。

Copyright 1999-2001 EDOCRAFT. Allrights reserved.
mail@edocraft.com