edocraft-header

僕は一代目
年季奉公
動機
手作り
道具
弟子
売れ筋
押絵
似顔
羽子板の見どころ
English interview
Back to product page
●僕は一代目
僕は一代目なんですよ。今年で四十五年くらいですか。

●年季奉公
戦後、いわゆる年季奉公っていうのがありまして、この羽子板人形業界 でも僕が最後だと思うんですよね。それで修業した。だから今考えると、ああいう風 に修業したのがよかったのかなあと思います。今はみんな親の跡をついでるだけです から、すごく甘いっていうか、まあ楽っていえば楽ですよ。職人さんっていうのは昔 は年季奉公でよその家(うち)に行って、怒られ、殴られ。ま、僕らの時代は戦後だ から殴られはないですが、明治時代の人はけっこうあった。それで一つの仕事を覚え て成り立ってきたんですよ。今はほとんど親の跡をついでいるだけだから、たとえば 面白くなければ映画見に行っちゃうとかですんじゃうけど、人さまの家(うち)に居 るとそれできないじゃないですか。あの時代はねえ、教えるほうも仕事はものすごく 真剣に教えてくれましたし、教わるほうも真剣だったし、だから今考えると、ああ良 かったかなあと思ってますけどね。

●動機
たまたまこの近所の入谷に押絵屋さんがいましてねえ、誰かお弟子さんを欲 しがってるみたいで、僕は体は丈夫じゃないし、性格が内向的なもんですから、セー ルスもできないし、そういうのもあって始めたんですけど、あっちへ移るとか、いろ んな仕事をやるっていうのができなくて、ずっと。始めたのは中学二年、十八ぐらい です。独立したのが二十八かな。それ以来ここで、なかなか浅草を離れられないです ね。職人だから、あそこの家を買うってなかなかできないじゃないですか。でも、お かげさまで浅草ではうちだけになっちゃいましたから、製造業者っていうのは。問屋 さんはいっぱいあるし、一年中羽子板売ってますし。あれ、売れるんでしょうね。売 れなければ、あれだけのお店を一年中、羽子板だけ飾ってなんていうのはありえない 。ああいう羽子板は埼玉県の春日部、川越、所沢あたりで作ってます。

●手作り
うちの場合は全部手作りです。桐板をはり合わせます。今は接着剤を使う こともありますが、なるたけは使わないほうがいい。昔ながらのもち米の粉。これが 一番いい。お菓子の原料で、糊(のり)じゃないんです。いろいろ機械での作り方も あるんですけど、うちのは全部手です。うちのは正絹(しょうけん)しか使ってない んです。いまは安いのがないんですねえ。一週間ぐらい前に京都から来たのも、ふつ う人間が反物に使うのを使わざるをえなくなってきちゃうのね。材料はどんどん値段 が上がってますよ。みんな羽子板屋さんって半端を買ってきてって思うけど、骨董市 なんかでも見ますよ、布(きれ)無いから。決った柄(がら)っていうのはあるけど 、そういうものは骨董市へ行って探さないとないんです。でも、かならず有るってい うわけじゃないです。昔の人はそんなに汚れ(よごれ)てませんから、ほごして使う 。ただ、そんなに数ないので、ほとんど京都。いいものを作るにはこまめに探してお かないとね。材質がいいと色がきれいなんですよ。

●道具
鋏(はさみ)、小鋏(こばさみ)、鏝(こて)、へら、鉛筆ぐらい。道具は ほとんどないです。

●弟子
一人、十五年ぐらいやって、やっと完成の域に着いたらやめっちゃうんです よね。だから、何の利益も無いから、お弟子はもうとらないですけど、うちの長男が 顔をぜんぶ描いている。まだ三年ぐらいしかやっていませんけど、中学生から勘亭流 (江戸文字の一種)やってましたから。羽子板に勘亭流で登場人物の名前を書くわけ ですけど、ひとに頼むと高くて商売になんない。でも、今じゃ長男が勘亭流で偉くなっちゃったから、よそへ頼んだほうが安いかもしれない(笑)。だけど自分が死んで 、この家だれが貰うっていったら子供が貰うんんだから、まあどうってことない、早 めにやっただけにすぎないと思うけど、かえって高いもんにつく。

●売れ筋
羽子板は小さいものがいちばん出る(売れる)んです。大きいものはねえ 、なかなか出なくてねえ。だから率が悪くても、いろんな種類を作んないと。お客さ んは買いづらいですから。このごろは似顔で欲しがってるお客さんが多い。昔は専門 に描く面相屋さんが大勢いたんですけど、今はいなくなって、だからうちで描いて作 んないと営業できないんですよ。たまたま長男が描けるから。習っているわけでもな いんだけど、僕がこういう風に描いてって指導して、ぶっつけ本番、何の練習もしな いで。だから最初はちょっと苦しかったですよね。でも、まあ何とか。(売れますか ?)正月はいいけど。ほかの季節はきついですよ。宝くじに当たるようなもんかな。 たまたま欲しい人がいて、逢えば売れるし。だから展示会に行くときにいろんなもの を持っていかないと。そん中から「ああ、あれいいわね」って選ぶから。うちは羽子 板とか、けん玉とか、独楽(こま)とか、いっしょに持っていく。売上がゼロってい うわけにはいきませんから。

●押絵
昔から押絵っていうけれど、明治時代には浮絵(うきえ)なんていって、立 体感がある。綿を入れて立体感を出す。はっきり言って、うちみたいに立体感出すの は少なくて、張絵(はりえ)みたいな羽子板が多いんですよ。昔の羽子板はみんなぺ ちゃんこなんです。だけど、そういうのが売れる時代じゃないんですよね。うちのは どっちかっていうと、お祝いの羽子板っていうよりか趣味の羽子板。買うのは六十歳 ぐらいからのおばあちゃんですね。今のお年寄はお金持ってるもの。やっぱりおばあ ちゃんじゃなけりゃだめだ。三十代、四十代の人はあまり買わない。

●似顔
片岡仁左衛門さん、孝夫さん。歌舞伎役者が多いですね。夢二なんかも意外 に出る(売れる)んですよ。(テレビの人気俳優は?)だめでしょうね。人気と違う のよね、華のある役者とでは。羽子板は女の人が買うんじゃないですか、あの人のた めにはなんかしなきゃって思うんでしょうね。だから歌舞伎はよく見るし、図案の本 ですとか、絶えず見てないと。

●羽子板の見どころ
歌舞伎を自分の家(うち)で観てる雰囲気。いい品物じゃない とそれは出てこない。たとえば鋏(はさみ)使うにしても心をこめて、出来上がった ものがそうなるんで、一カ所だけ丁寧にやってもだめ。穏やかな心境で作る場合と、 イライラ作ってる場合では、最終的に出来が違ってきます。ああお金がないとかって いうとケチっちゃうわけです。布(きれ)はちゃんと柄(がら)を見てやればいいけ ど、もったいなから何でもそこへ入れちゃうとか、安物はそうなんです。ゆとりがな いわけ。いいものは和菓子屋さんとか呉服屋さんがウィンドウに入れてもおかしくな いんです。安いもんだったら品物が死んじゃうでしょう。安い羽子板飾ったら二百万 円の着物が死んじゃうから。いいものは家(うち)も引き立つ。売れなくてもそうい うもの作っておかないと。羽子板市でもそうですけど、見る人が楽しくないとね。買 っても、買わなくても。そういうものは数つくれないですけどね。

Copyright 1999-2001 EDOCRAFT. Allrights reserved.
mail@edocraft.com