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一人前になるのに十年近くかかるからね
大抵の物はやるからね
われわれの作る品物は洋部屋じゃ合わないものね
やっぱり女の人が多いね、うちの場合は
よしなよ、女の子じゃ無理だから
ここは結構テレビの撮影やってるよ
夏なんか汗かいたら、真っ黒なやつが飛んできてそこら辺くっついちゃって
やっぱり職人が一番知ってる
あの皮がねえ、漢方薬の薬になるね
積み木じゃないけどさ、面白い形に切ってあげてね

English interview


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一人前になるのに十年近くかかるからね
(何代目?)二代目ですよ。親父が好きでやった仕事ですから。(好きでやった?)親父がこういうものを作るのが好きで、そいで岡山から東京に出て来て。で、いろんなことやったらしいけどこれが一番自分に性が合ってるって。(お父さんは修行を?)当然そうだよね。(今は兄弟でやってる?)ここでも一番多いときは四人仕事してたの、この狭いところで。今そんなに居ないけど。(兄? 弟?)兄貴。(この場所はいつから?)昭和十九年から。(お父さんの代から?)ええ、前はほかに居たんだけどね、戦争で強制立ち退きをくったの。延焼防止だよ。火事で焼けるといけないって言って家取り壊し。それでここに来た。(ここは焼けなかった?)焼けなかった。疎開する必要なかったね。そこのお寺の本堂に爆弾が落ちてさ。今こんなものが建ってるけど、長屋があって瓦だとか窓ガラスとかが全部割れてね、おふくろがびっくりして疎開したんだよ。それで疎開先で母親に死なれてさ。まだ戦争中に東京に帰ってきたんだよ。(仕事を始めて何年?)俺はもう数え切れねぇよ。もう四十何年やってるよ。(跡継ぎは?)俺でお終い。(息子さんは?)やろうかなぁ、とか言ってたから、止めとけって言って、さっさと勤めに出しちゃった。正解だな。(戻りたいって言わない?)戻りたいって言って戻れる仕事じゃないからね。一人前になるのに十年近くかかるからね。もう、現に見てるから、自分のせがれが一人前になる頃には、仕事が下降線になってきているのを。それで中途半端にしちゃったからかわいそうだ、せがれに申し訳ねえって言ってる。まだ独身でふらふらしてるよ。まあ勤めには行ってるけどね。

大抵の物はやるからね
(品物はどんなものがある?)指物師っていうのは、うちはこれしか無いっていうんじゃなくて、何十種類って仕事やるからね。大抵の物はやるからね。(室内の家具?)そうだね。指物ってのは和家具だからね。昔は机を作ると本箱と一緒だったんだけどね。今はそんなことなくなっちゃたな。(材質は?)そうだね、桐、欅(けやき)、たも、桑、いろんなのがあるね。これひとつにだって木は三種類使っているからね。周りの棚の部分が黄蘗(きはだ)っていって北海道の木でね。お盆が桐でしょ? それで縁(ふち)には桑が使ってあるから。まぁ、色つけちゃうと分からないけどね。(どうして縁は桑?)どうしてもぶつけるのはこういう所ですからね。こいつは硬いから。それにアクセントになるからね。色違いになるから。

われわれの作る品物は洋部屋じゃ合わないものね
問屋でつぶれたのは洋家具屋が多い。指物を扱っているところはそんなに無い。問屋もでかくないよ、指物を扱っているところは。(日本家屋が無くなったから?)畳の部屋が無いからね。それが一番ですよ。われわれの作る品物は洋部屋じゃ合わないものね。やっぱり和室に合うからね。どっちにも合うようなものを考えて作ればいいんだって言っても、売れりゃ良いけどさ。(今のお客は?)問屋もやってるし、展示会やった時におたくの品物気に入ったからって来る人もいるしね。昔から比べるとやっぱり広く来るようになったよね。展示会で、仕事場が見たいとかね。ここですよと言うと来てくれて、こういうもの作ってくれとかいろいろ言うからね。

やっぱり女の人が多いね
(これはなんていう品物?)これは乱れ棚。部屋の隅なんかに置いておいて、ちょっと着替えるときなんかに、ちょっとそこへね。(この彫りは楓の葉?)そうだ。うちの前の落ち葉見てこれはいいやと思ってね。(彫刻屋に頼む?)ミシン屋っていってね、糸鋸(いとのこ)使ってる、それ専門が居るの。そこへ行ってね。今自分でやる人が多いけどね、仕事場が狭いからいろんな機械置いちゃうと、ますます座るところが無くなちゃうからね。(これは何机?)これは文机(ふみづくえ)。今、木が焼けるのね。最終的にはこんな色になっちゃう。(最初はああいう色でも?)ええ、木が焼けるんですよ、自然に。(日が当たったから?)日に当てても、当てなくても焼けるんですよ。仮に太陽に当たったらら、その通り跡になっちゃうね。(それは桑だけ?)いやいや、他の木でもなんでも。直射日光ってのはやっぱり駄目だよな。(得意な物は?)得意な物っていうより、桐物のほうが多いかな。(頼んでくるのはどういう人?)やっぱり女性の方が多いね、男の人よりね。男で来るのはチリ箱作ってくれとか、何かを入れるのにケースが欲しいんだとか、自分の道楽が多いね。やっぱり女の人が多いね、うちの場合は。(歳は五十以上?)そうだね、年輩者のほうがね。結構高いからね、品物が。年輩者になんないと多少の自由利かないんじゃないかな。(これはどのくらい?)これで仕上がったら二十万超えるんじゃないの。(パソコンに比べれば安い!)そうかね。(パソコンは半年で型が古くなって、これは一生物では?)そうだね、大事に使っていればね。これと同じような物、それこそ横浜とか行けば二、三万円で売ってるんじゃないの? うちだってその辺のつまらないもの買ってくるよ。ベニヤでできたもの。俺つくんないから。(自分の物は作らない?)三千円とか四千円とかで、こんなでかいハンガー買ってきて・・あれ便利でいいよ。あんな物だったら傷つこうが何しようが惜しくないもんね。

よしなよ、女の子じゃ無理だから
昔はもっと居たんだよね、親父が若い頃は。五、六人居たんじゃないの、多いときは。(住み込みで?)いやいや、通いもいたし、仕事場に寝てたのもいるし。昔はざらだったから、仕事場に寝るなんて。今ないでしょ? 若い衆が来たって辛抱できない。来たからって一人前になれる奴なんてそうはいないしね。三年ぐらいはどうしようもないからね。三年たってやっと自分が食えるくらい仕事ができるようになる。五年でなんとか。でもやっぱ、やろうとしたら十年くらいかかっちゃう。(好きで仕事を始めた?)いや、他に行くとこ無かったからしょうがねぇから。うちのが一番楽そうだったからね。(それでお父さんのところで?)俺はよそへ一度も仕事に出たことが無い。他の仕事はいっさいしたことが無い。(修行は大変?)自分ちだからね。勝手にずる休みをするし、遊びはするし、若い頃。それでもなんとか覚えてきたよ。それでもやっぱり真面目にやる奴よりは二、三年余計にかかってんじゃねえの? (カメラマンを見て)写真ってのは大変だなあ。昔はねえ、狭い仕事場でもね、人間が座れたの、大勢。今みたいにこう機械が無いからなあ。俺が仕事場に入った時だって、機械なんてうちに一台も無かったんだから。(いつ頃から機械使い出した?)俺が十八、九の時だからもう四十四、五年前かな。(あの機械は?)木を切る機械。あれは木を削る機械。これも木を削る機械。あそこの奥に入っているのが四角い穴を角ノミってやつで、ノミさえとっかえれば大きいのも小さいのも。だから仕事は楽だ今、考えると。みんな機械がするんだからね。昔はみんな手でやった。今、職人訓練講座出てきて、女の子が弟子に使ってくれなんて探して歩っているよ。悪い事言わねえから、さっさと辞めちゃえって俺言うんだけど。(テレビドラマの女の子の大工さんの影響?)そうそうそう、あんなのやってるからじゃないの? 女の子が使ってくれだって。よしなよ、女の子じゃ無理だから。(もう弟子も取らない?)取らない、俺はね。

ここは結構テレビの撮影やってるよ テレビドラマのね、俺モデルになったことある。
(指物のドラマ?)ま、そうだね。指物のドラマだね。(いつ頃?)うーん。もう七年、八年かな。撮影もここでずっとやったし。うちの仕事場とそっくりなやつを撮影に作ったしね。ここは結構テレビの撮影やってるよ。

夏なんか汗かいたら、真っ黒なやつが飛んできてそこら辺くっついちゃって
あれが時代仕上げって仕上げなんだよね。(焼いてから磨く?)そうそう。あれやると大変なの、真っ黒になっちゃうんだ。夏なんか汗かいたら、真っ黒なやつが飛んできてそこら辺くっついちゃって。(茶色に仕上がる?)ねえ、その茶色はいい色だね。(指物はだいたい茶系統?)そんな赤だの、黄色だのなんてのは滅多に無いね。赤いのはあるけど、朱色だね。(焼くのは虫除け?)いえ、そんなことは無いと思うけどね。(見た目?)うん。色を出すためにとか、木の目を生かすとか、そういう意味で焼いてるから。焼く前はこの色なんだから。

やっぱり職人が一番知ってる
(和家具は地域で形が違う?)いやそういうことは無いと思うけどね。形が違ってくるのは、作る職人によって、俺はこの形がいいと思うとかね、別のやつが俺はこっちのが好きだなんてのだね。よくデパートにデザイナーなんてのがいるけど、あいつらどうしようもなくてね。偉そうな事ばかり言ってやがって。図面見て「これ駄目だよ、形が悪いよ」ってゆってるのに、「いや、そんな事は無い」とか、「これはどこそこの大学出たデザイナーが作った」とか・・・。「作って悪いって言ったって俺は知らないよ」って念を押してるのにさ、作ったら案の定「これ土師さんもう少し細めにしてくれ」とかね、なんだかんだ言ってくるから「おら最初からそう言ったろう」って怒ってやんだけど。やっぱり職人が一番知ってる。実際に自分が作ってるんだからね。

あの皮がねえ、漢方薬の薬になるね
(その板は?)黄蘗(きはだ)。黄色い肌。(黄蘗は薬になる?)そうです、そうです。あの皮がねえ、漢方薬の薬になるね。だから黄蘗なんて使って、皮が付いてると、通行人で知ってる人は呉れくれって言う。まあうちあたりは薪にして捨ててるや。そうすると、その皮くださいなんて言ってね、持って行って薬作る奴がいるよ。(違い棚は桐?)桐。(この乱れ箱は?)桐と黄蘗と、縁に桑が使ってある。だいたい桐と黄蘗と桑と、その3種類しか使ってないね。(組み合わせて?)それを適所に使ってるだけで。桐じゃそういう猫足はできないんだよね。うん、木が弱いから、折れちゃう。

三角に切ったり、積み木じゃないけどさ、面白い形に切ってあげてね
外国人まで来ますよ。なんか仕事無いかなとかね。教えてくれとかって言って。そんなものどうするの? 言葉もろくに出来ないしね。どうやって教えるの? だからさっきも言ったけど職人訓練校出た子たちが多いね。だけどもう遅いんだよ、歳から言っても。やっぱり来るんだったら、せめて高校出たぐらいで来ないと。じゃなきゃ俺みたいに中学ぐらいからやっちゃわなきゃ。(職業訓練校出るといくつ?)高校出て職業訓練校ニ年行きゃ、二十歳ぐらいになっちゃうんじゃねえの? うん。中には学校の先生辞めて、弟子入りした奴もいるけどねえ。そいつもなんとか一人前になりそうだけど、今よそで、うちじゃないけど。あと定年退職者が多いね。自分でやりたいんだから教えてくれとか、見してくれなんて。(そういう人も断る?)いや見る分には見せてやるよ。デパートなんかでやってると来て、仕事場見さしてくれなんて、とんでもないとこから来たよ、わざわざ。ここで半日ぐらいじっと座って見てたよ。物を作る人は、好きな人は、通行人でもじっとそこにたたずんで見てるよ。で、好きな人はいろんなこと知ってる、話してみると。(子供がここで立ち止まったり?)うん。よく幼稚園の先生なんかが通ると、木のかけら、薪の部分だけど、子供たちが作るんで下さいなんて言ってね。前そこに幼稚園があって、今引っ越しちゃったけど、よく来て持ってった。だからこっちも幼稚園の子が使うんじゃって、三角に切ったり、積み木じゃないけどさ、面白い形に切ってあげてね。


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